02月2週
【推移】
8日(月):
FX業界が大好きな踊って騒ぐだけの雇用統計祭りは通過。米非農業部門雇用者数は15.1万人増(市場予想は19万人増)。11月、12月分は2000人の下方修正。解釈は「異例の暖冬による追い風が弱まった」とある。まあいまだに古典的な手紙での調査というのも奥ゆかしいが、それで踊るなら阿波踊りの方がよほど賢い。
因みに失業率は4.9%。統計数字や経済指標というものの不透明感を払しょくするほどの権威はないような気がする。コンピュータがどんどん進化して、国内の選挙では投票締め切りと同時に当選確実が出る。理由は出口調査とサンプルによる類推。結論は一緒であることが多いのだがそれこそ数本の木を見て森を図る世界。海のこちらで雇用統計をチマチマと論じている最中。当のアメリカでは日曜の夕方からのフットボールに夢中という因果な世界。
所詮東京市場と言うのはそういう立ち位置にあるということは忘れられない。今年のTVCMのスポンサーはコカ・コーラやペプシコ。食料品や清掃用品など日常消費財を扱う企業の株価は、昨年のスーパーボウル時から他のセクターをアウトパフォームした。だから今年もアメリカの内需系銘柄?なんて声も聞こえないではない。さらに登場するのがスポーツイラストレイテッドの水着特集号の表紙のモデルのアノマリー。SI誌の表紙をアメリカ人が制すれば、その年にS&P500は上昇。アメリカ人でなければ、下落する傾向が高く的中率は8割。東京では話題にならない事柄が、ウォールストリートでは結構真剣に論じられている。彼らは東京時間に騒ぎ遊んでアジア時間の株など蚊帳の外。飲んでいてもよその国の為替や株価が気になる東京市場人とは一味違う。
マイナス金利導入決定はかき消された。先週末まで日経平均株価は221円下げ、円相場は約2円上昇した。「元の黙阿弥ですぐ帳消しになった」との声。宰者の日銀総裁としては腹立たしい限りだろう。捲土重来という言葉はこういう時に使うのだろうし、振り返ってみたら誰もいなかったという喜劇チックな展開。責められた挙句の独り芝居はもう止めにしたいという気持ちも理解できる。何でも欲しがって結果が出なければ阿鼻叫喚。市場は我がままだし貪欲である。「過去2回に比べると、株価や円相場に与えた影響の小ささが際立つ」。そう言われたって本石砲だけでは戦えなくなってきたのも事実。
ここは永田町の決意と覚悟が欲しいというのが市場関係者の静かな声だろうか。
日経平均株価は184円高の17004円と5日ぶりの反発。ドコモ、カシオが上昇。鉄、DOWAが下落。
9日(火):
わかりやすいというか、単純というか・・・。
複雑怪奇に見えるような市場展開だが、売りで攻めようとする立場で考えてみることも重要だろう。例えば春節で中国市場は休場。これをダシにして材料として使えないならば、久しく市場の焦点から外れている欧州に目を向けさせるのが得策。ギリシャのアテネ総合指数は昨日7.9%の下落し464.23ポイント。2012年6月5日の安値476.36ポイントを下回った。2012年と言えば欧州債務危機が高まりを見せたころ。しかもあれだけギリシャの財政の帰趨が危ぶまれた昨年の今頃は700ポイント前後。それよりも今の方が安いということ。実態は何も変化していないのに解釈する方が見えたり見えなフリをすることが多いということでもある。見るものがなければ自然と欧州も目に入り、ドイツDAXも3.3%安で6日続落。
2014年10月27日以来1年3ヵ月ぶりの水準まで下落してきた。その2014年10月27日の日経平均株価は15338円。この時間軸の真似はして欲しくないもの。市場材料は所詮「もぐら叩き」の舞台みたいなものと考えるのが良いかも知れない。おまけにサンタクララで行われたプロフットボウルのスーパーボウルはAFCのブロンコスがNFCのパンサーズを破り3度目の勝利。アノマリー的にはNFCチームが勝てばNY株高ですから市場関係者の願いとは裏腹な結果となった。ちなみに昨年はAFCのペイトリオッツが勝って結局NYダウは7年ぶりの下落。
株式市場よりもさらに大きいのが債券市場。米国10年国債利回りは1.753%。日本の10年国債は0.035%。これはこれで異常な低金利ですが、逆に利回りの急騰=債券価格の下落が起こった時の方が市場的には怖い動き。少なくとも株が下げても債券が買われているうちは危機のサインなどあり得ない。むしろ備えるべきは債券までもが売られること。債券安・株安そして強烈円安となればそれこそ一大事。しかし今はまだ債券高・円高・株安。どこかで暖かい春一番を待ち望む気持ちを持っても悪くはない。
日経平均株価は918円安の16085円と大幅反落。値下がり銘柄は1904、昨年来安値更新銘柄は1904となった。東急建設、OLCが逆行高。三菱UFJ、ユニプレスが下落。
10日(水):
首の皮一枚。板子一枚下は地獄。そんな言葉に象徴されるのは16017円という1月21日安値。前日の日経平均は918円安と今年一番の下落幅であったが、16015円でとどまった。16017円が三寸の船板ということになるのだろうか。夜が明けてみれば続落記録ばかり。NYダウとFT100指数は3日続落。ドイツDAXは7日続落。バルチック海運指数は変わらずを挟んで26日続落。原油はバレル27ドル台まで下がった。でもシカゴの225先物終値は16115円と大証比プラス。前日114円台まで沈んだ円も115円026円まで戻してきた。
そろそろ日本株も売り飽きたと考えたいところ。黒を売り白を買いとして盤面がほとんど黒く埋められてオセロみたいな相場。でも四隅は四つとも埋まっていない。この局面ではむしろ四隅の取り方で一気に形勢は逆転する。どうもそんな状態と思えてならない。相場はオセロ。オセロは最後の数手で逆転可能なゲームでもある。
日経平均株価は372円安の15713円と続落。681銘柄が昨年来安値を更新した。SUMCO、三井海洋が上昇。KDDI、信号が下落。
12日(金):
火曜日以降、3日間の立会いで日経平均は2000円超の下落。25日移動平均線との乖離率はマイナス11.86%で1月21日のマイナス11.66%を上回った。
昨年8月25日のマイナス12.23%の迫った。11日の欧州市場の大幅下落と一時110台となった円高を嫌気というより驚愕しての売り物。昼休みに「安倍首相と黒田日銀総裁、浅川財務官が会談」と伝わり、為替介入への期待感からドル円が113円台に急騰。しかし会談で具体的な材料は出ず、再び軟調な動きとなった。
日経平均株価は760円安の14952円と3日続落。東証1部の売買高は47億416万株、売買代金はオプションSQということもある4兆1833億円。年初来安値更新銘柄は1023。東日本大震災後の2011年3月15日の1048銘柄以来の多さとなった。昨年来高値更新銘柄はゼロとなった。日本紙、ライオンが上昇。野村、トヨタが下落。トヨタの時価総額は1年4カ月ぶりに20兆円を割れた。
(2) 欧米動向
北朝鮮がミサイルを発射。
国連安保理の制裁とアメリカ・中国の動向がクローズアップされるのだろう。
射程距離12000〜13000キロというのは結構大きい。
しかし、より大きな問題と思われるのはイランが原油代金をユーロで決済する方向。
やさしいそぶりを見せたアメリカにとっては「え?」の話。
欧州はイラン最大の貿易相手地域の一つであり「請求書では、ユーロでの支払いを明記する」という。
ドル依存の低下が狙いというから世界というか地政学というのはわかりにくいもの。
中東が原油代金にユーロを持ち出してくると、再びユーロ危機が起こらないでもない。
ミサイルよりも何よりもこのマネーの地位の争奪戦こそ火種。
イランも何を考えているのかなかなか理解しにくい。
そして北朝鮮の行動黙認みたいな中国。
1月末時点の外貨準備高は3兆2300億ドルと、前月から995億ドル減少。
2012年5月以来の低水準となった。
昨年12月の1079億ドルに次ぐ規模の減少だったことになる。
外貨建て債務の返済や人民元安防御のためのドル売りなどが背景として継続している。
興味深いのは金の準備高の増加。
昨年末の601.9億ドル→635.7億ドル。
紙ではなくやはり実物こそ信用できるということなのかも知れない。
(3)アジア・新興国動向
中国の春節期間中の日本株は過去10年で8勝2敗と好成績。
昨年ですら2.12%の上昇だった。
だからといって所詮アノマリーはアノマリー。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
15日(月):10〜12月GDP、米プレジデンツデーで休場、米ASEAN首脳会議
16日(火):首都圏新規マンション販売、NY連銀製造業景気指数、独ZEW景況感
17日(水):機械受注、訪日外国人数、米生産者物価、鉱工業生産
18日(木):貿易統計、米CB景気先行指数、中国消費者・生産者物価
19日(金):半導体BBレシオ、米消費者物価
最近は忘れられているが数年前から「グレートローテーション」という言葉が出てきた。
低金利で債券運用ができなくなった資金が株に移動するだろうという読みを表現した言葉。
それが日本国債が史上初のマイナス金利になっても日経平均は1000円近くの下落。
どう考えても不自然と言うか変。
金利が上昇して崩壊する国家はあっても金利が下落して崩壊する国はなかろう。
これは通貨が売られて崩壊する国はあっても通貨が買われて崩壊しない国がないのと同じ。
「グレートローテーション」はマイナス金利という「パラダイムシフト」を伴って復活しようか。
一番怖いのはマイナス金利のトレンドが反転して弾みがつきリバウンドでの異常な高金利がくること。
その方がよほど怖い。
リスク回避で安全資産の円とか債券が買われるという解釈が横行するが、パラダイムは変わろう。
まともに考えれば債券がマイナス金利まで買われているのは異常な世界。
「安全資産を保有するためには多少の保険料を払ってもいい」との不安心理なんてどこかおかしい。
異常はどこかで元に戻る筈。
「世界経済の先行きに対する市場からの警戒シグナル」という活字が見られる。
あるいは「弱い鎖がどこで切れるのだろうか」という指摘もある。
みんなが揃って進む方向はたいていは時間がたてば誤ちに気がつくもの。
殺到はピークでいずれ離合集散するのがアメーバのような市場マネーの性格。
もし、今100兆円の運用資産のファンドマネージャーだとしたら・・・。
日本国債売りと配当利回り3〜5%の現物株買いのポジションを取りたいものである。
分配金利回り3%台のREITは中途半端な利回りだがそれでもマイナス金利よりはマトモな運用になろう。
いよいよ債券市場に「宴のあとの悪魔」が来てもよいだろう。
以下はバンカメ・メリルの日本株投資戦略。
この解釈が正しいと思われる。
「日銀はまだ本気出してないだけ。政策金利マイナス1%時の日本株。
↓
(1)日銀が政策金利をマイナス1%まで引き下げても現在の日本のイールドカーブの形状が維持される場合には2年物国債利回りはマイナス1.08%となる。
金利差拡大とインフレ期待上昇から7%程度円安が進行すれば日本の企業業績は5%程度増加すると試算される。
(2)日銀が政策金利をマイナス1%まで引き下げれば、リスクフリーレートの低下と株式リスクプレミアムの低下の両方からバリュエーションは上昇する可能性が高い。
日銀がマイナス金利を導入する前の1月28日の10年物国債利回りは0.2%。株式リスクプレミマムは7.6%、PERは12.8倍であった。
もし10年物国債利回りがマイナス0.8%まで低下し株式リスクプレミアムが7%ポイントまで低下すればPERは16倍となり、マイナス金利導入前から25.8%上昇すると計算される。
(3)日銀が政策金利をマイナス1%まで引き下げ、企業の預金にマイナス金利が課され、個人の銀行口座への手数料が強化されれば、企業による自社株買いが増加。
個人の預金が配当利回りの高い株式やREITに投資される可能性があろう。
東証一部上場企業(除く金融)と家計の現預金はそれぞれ122兆円、887兆円ある。
業績、バリュエーション、需要の変化を通じて政策金利マイナス1%は日本株にポジティブな影響をもたらそう。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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