06月4週
【推移】

22日(月):
日経スクランブルの指摘は「仮儒の重荷は去った」。2兆9000億円台まで減少した裁定買い残。そしてリーマンショック以降最大の38.3%のカラ売り比率。仮儒が減ったから重石が消えて株高というシナリオ。間違ってはいないだろう。しかし仮儒が増えなければ相場は大きくならないのも過去の歴史。中国上海市場が、景気実態を度外視して成長したのも個人投資家の信用取引。
1960年代から1989年までの東京市場も同様だった。仮儒の重荷が消えたから買うのは実需の買い。ただ株式市場の実需というのは現物株を買うことに過ぎない。本当に株式の需要があるヒトや会社などそうは多くない。少ない実需に期待するしか道がない訳ではなかろう。工夫した投信、わかりやすいETF、投資家本位の仕組み債。もろもろ創意工夫の余地はある筈だし、市場が求めているのは形を変えた仮儒でもあろう。ココが21世紀の株式市場のめざす道なのだろう。刹那的に旅人のように市場の一里塚を通過していくバイオやセキュリティとは違う世界。
もちろんMERS、学習塾、和装関連など日々のテーマも大切ではある。土曜の日経では「持ち合い株売却加速」の見出し。株の持ち合いで一般の投資家からの声が届きにくいから、というのが理由。コーポレートガバナンスコードでは、政策的に保有している株には合理的な説明が必要とされる。そして持ち合いの解消を促しているというのが現実。1988年度に持ち合い株は時価総額の55%だった。
これが海外からアレコレと難癖をつけられた結果、昨年度末は16%まで低下した。それでもまだ持ち合いをやめろコールが流れる。1988年には、日本株の独自の上昇の理由を持ち合いに求めた海外投資家からの声が相次いだ。今回はわずか16%の持ち合い株を仇敵視しているという非条理のようなものだろう。保有株を売って自己株を買いROEを高めよとでもいうのだろうか。時価会計が及ぼした弊害などお構い無しで、海の向こうからの声には従順な東京市場。どうして反論しないのだろう。鵜の目鷹の目で儲けのチャンスを求める海外投資家だけに迎合してもいいものだろうか。だったら、株主優待の拡大を求めることだって悪くはないだろう。どこも一緒のクオカードやお米だけでなく株主優待に独創性を求めることも必要だろう。
「持ち合い株はなお市場全体の2割弱残る」というが「わずか2割しかない」と言えないのだろうか。浮動株を増やして、良いところを買い増され、そして海外投資家の儲けが増える構図。むしろ中国のように外国人投資家に対する投資規制を強化した方が株価は上がるのかも知れない。
日経平均株価は253円高の20428円と続伸。ファーストリテ、三菱UFJが上昇。アイスタイル、ボルテージが下落。

23日(火):
20569円というのが日経平均株価の6月1日終値。これを抜けてくると月足陽線。6ヵ月連続となる。
参考にしたいのは今年の1月と4月。SQ値はSQの金曜日を含めてその後1週間以上は「幻SQ値」。それでも月足陽線になった。今月も20473円を抜けずもはや7日が経過。ようやくエンジンがかかってきたような感じ。19990円で終わったのが先週の木曜日。しかし同日の指標を見てみれば、空売り比率はリーマンショック後最大の38%台。
日経平均採用銘柄のPERは16倍台割れ。概ね16倍台割れで反発してきたのが今年の相場だから、底打ち感は感じられたのではなかろうか。株価はきれいな右肩上がりの相場。25日線を奪還し、5月SQ値を奪還し、そして月足陽線基準20569円も奪還。2000年4月ITバブルの高値が20833円に肉迫した。届かなかった世界が現実となった。先週、聞いた言葉は「日経平均の1万円ってまた見れますか」。3年前だったら仰ぎ見ていた1万円。今ははるか雲の下。言葉の意味合いは180度違う状況になってきた。
日経平均株価は381円高の20809円と3日続伸。3週間ぶりに年初来高値を更新した。秀英、ナイガイが上昇、ツカモト、NOKが下落。

24日(水):
2016年から東証マザーズ指数先物が上場するという。「個人投資家が価格変動リスクを回避しやすくなる」というのが大義名分。説得力はある。しかし、別の考え方では、動きの大きい=ボラの高い新興市場。成長力は大型株市場よりもはるかに大きい。しかし外国人投資家にとってみれば、中小型株・新興株はよく知らないしわからない。だから指数と言う形にして提供するということなのかも知れない。
先物の新物の登場は、まずは原指数の上昇を伴うもの。とすれば、2016年半ばにかけてのマザーズ指数は上昇が楽しみになってこようか。JPX400のオプション取引も開始するというからこちらも悪くはないはず。
因みにJPX先物は昨年11月に上場したがそこから相場はウナギ登りとなった。そして、取引時間の延長。株価指数先物は寄り付きが8時45分。大引けが翌日午前5時半。迎合にもほどがあるが、寄り付きの前倒しは賛成。しいて言えばどうせ8時45分からスタートするならば、特定銘柄のゲキタク売買も復活したらどうなのだろう。新値を更新してもガラーンとした取引所に見掛け上の活気が戻ることは間違いない。18年ぶりの高値。
後場寄り直後の日経平均は20952円。1996年12月5日の20942円を上回った。終値ベースでも2008年4月12日の20833円を抜けた。一気に節を抜いてきたのは直近の数字も同様。
6月SQ値20473円、6月月足陽線基準20569円も抜けた。幻のSQ値は消え、6か月連続月足陽線の可能性。気の早い向きは「次は1996年6月26日の22666円」との目標。相場解釈はトレンド次第の好例だろうか。何もなかったかのような市場関係者の今後1年の株価レンジ予測。下値は18000円だが、上値は25000円まで上がってきた。22000円からは2000円水準の上方修正だが「年初の読み間違い」の陳謝はない。間違えても誤らない世界というのは面白いもの。あまりに外れれば消えていくのだろうが、それもめったにない世界。傍から見れば楽に映るのかも知れない。リスクは下方だけでなく上方にもある。「上がっているからまあいいか」ではないだろう。
日経平均株価は58円高の20868円と4日続伸。BS11、林兼が上昇、ホシデン、ティアックが下落。

25日(木):
株価の上昇で日経もいろいろな資料を持ち出してきたもの。一つは1面の「海外マネー裾広く」。2012年と比較して日本株投資を増やした国を登場させた。
スペイン4.3倍、イスラエル2.8倍、マレーシア2.4倍、スイス2.2倍、サウジ2.2倍、フランス2倍。問題は倍率ではなく絶対額なのだろうが、この数字だけをみると錯覚を起こしそうになる。
ITバブル期には100倍を超えていたPERは東証1部で18倍。アメリカの19倍、ドイツの16倍と比べても割高感はないという声はもう聞き飽きたが・・・。
もうひとつは東証1部の売買代金2兆円超が連続53日の記録という指摘。4月7日からの連続継続となった。13年4月1日→6月14日までの52日を抜き4位。今日も2兆円超なら06年1月5日→3月23日の54日に並ぶ。その先は07年9月の72日、そして07年1月5日→8月27日の160日。ここでも小泉記録を抜けるのかも知れない。
日経平均が12連騰したのは5月15日→6月1日。上昇幅の合計は999.63円。この4日続伸の上昇幅は終値ベースで878円。ここでチョット一休みの段階なのかも知れないが、所詮ギリシャをネタにしてのNY安。むしろ押し目の発想の方が良いのだろう。

因みに、ここ数日目立っているのが日経平均現物と先物の逆ザヤ。3月9月などの権利配当落ちの時期を除いて本来は先物の方が少なくとも金利分は上ある。しかしこのところは10円から20円下での時間帯が長い。決して先物主導ではない証左でもある。
ある先物専門家の声は「バブル崩壊以降、こんなことは90年代半ばに1回しかなかった。その時は裁定の解消がやり放題で裁定解消が株価を引き上げた稀有な歴史がある」。90年代半ばといえばおそらく95年7月7日の頃だろう。歴史的円高から円安転換を背景にしての株高だった。まさに96年の22666円に向かう時と同じような状況が再来したことになるのだろう。つまらない手口を詮索するよりもよほど気が効いた解釈。もっとも、前日のドイツの1万枚超のTOPIX先物売りは気にかかる。
だから、という訳ではないが先週の裁定買い残は1190億円減少し2兆8072億円。3週連続の減少となった。全く気にならない水準の裁定買い残で日経平均は18年ぶりの高値というのも珍しい。本来なら4〜5兆円積み上ってなければならない株価の筈。過去に例を見ない異例の上昇とも言えよう。昨年2月に東証が誤って裁定買い残を6兆円台と発表。うがった見方ではこの時にこの布石はあったのかも知れないと読みたくなる。みずほが10銭刻みの売買になったのが昨年7月22日。値動きのショボさが目立ち10円以上の下落は2013年6月以降ない。一方10円以上の上昇は今年5月までゼロ。しかし5月18日以降は一昨日で3回。ここでも動きは違ってきているようだ。
日経平均株価は96円安の20771円と5日ぶりに反落。エコナック、コープケミが上昇。Klab、TDKが下落。

26日(金):
6月第3週の投資部門別売買動向では個人が買い越し。海外投資家が2週連続売り越しの図式。下がれば買う個人、上がれば売る海外投資家の構図に変化はない。市場ではファーストリテ、良品計画など工小売り関連銘柄の年初食らう高値更新が相次いでいるとの指摘。内需とインバウンドの饗宴が今の相場の実態なのかも知れない。
日経平均株価は65円安の20706円と続落。ギリシャ情勢の迷走が背景との解釈。TOWA、西松屋が上昇、さが美、三愛石が下落。

(2) 欧米動向
日経1面では「伊藤忠、シェールガス撤退」の見出し。
25%出資していたアメリカの石油・ガス開発会社の株を1ドルで売却。
1000億円以上の損失を計上した。
大手商社で初めてのシェール事業からの全面撤退となる。
わずか1年半前。
株式市場を取り巻いていたのは「シェールがアメリカを変える」というばら色の夢。
しかし、今となってはあだ花だし、そう唱えた市場関係者の反省の弁も聞かれない。
いいときは主張するがダメになったら沈黙というのも市場関係者の得意技。
世界的に株価が上昇基調だから苦言も聞かれないが、無責任過ぎはしないだろうか。
シェール革命は大きな錯覚という少数意見は当時冷笑されたが、今となっては正かった。
そんなことは市場にはいくらでもある。
ダメだったポルトガルは復活。
あれだけ懸念されたウクライナ問題はだれも話題にしない。
中国のシャドーバンク問題はどこへ行ったのか。
ギリシャだっていずれそんな材料になるに違いない。
だから騒ぎに見えないふりで株価は上昇基調なのだろう。

(3)アジア・新興国動向
土曜の日経では「上海株急ブレーキ」の見出し。
6月12につけた7年半ぶりの高値からの下落率は19%。1年で信用取引残高は5倍になったという。過熱の裏側の大幅安というのは株式市場の常でもある。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・
29日(月)鉱工業生産、米中古住宅販売
30日(火) 米ケースシラー住宅指数、シカゴ購買部協会景気指数、イラン核協議合意期限
1日(水)日銀短観、路線価公表、新車販売台数、米ADP雇用統計、ISM製造業PMI、カナダ、香港、タイ休場
2日(木)マネタリーベース、米6月雇用統計、製造業受注
3日(金)米市場休場(独立記念日)

7月(文月)
過去25年間は10勝5敗で9位。
1日(水)ECB理事会
2日(木)満月、ポイントの日
3日(金)米独立記念日振り替え休日、ポイントの日
10日(金)SQ、ポイントの日
16日(木)新月、ECB理事会、ラマダン終了
17日(金)ポイントの日
21日(火)ポイントの日
24日(金)金星逆行開始
27日(月)ポイントの日
28日(火)FOMC、天王星逆行開始
31日(金)満月

市場は「買い戻し中心の展開」との声。
6月18日のカラ売り比率38.36%はリーマンショック後の過去最高水準だった。
ところが株価は18日の19990円から月曜には2万円台復活。
一気に800円も上昇した。
しかも6月末の株主総会シーズンの後に7月初旬にはETFの分配金の再投資が待っている。
これは途中で踏むのが定石だったろう。
因みに6月16日のTOPIX銀行業のカラ売り比率は42%台。
19日時点でカラ売り比率が51%だったのが保険業。
昨年7月の53%台に接近していた。
ギリシャを取りに行って踏みに行った構図。
ミイラ取りがミイラになった訳ではないがどちらかと言うと自責点だったのだろうか。

もうひとつの指摘は「6月第2週に投信が225先物を3012億円の買い越し」。
背景は日経レバ(1570)の大量の資産増だという。
この6月第2週に日経レバの資産総額は927億円増加した。
レバETFなので2倍の225先物を買うことになるから1854億円分。
225投信(1321)にもまとまった買いがあったようで2つ合わせて2140億円の先物買い。
これは結構大きかったし、誰が大量に日経レバを買っているのかがミステリー。
正義のヒーロー探しはアチコチにある。
というか、この正義のヒーローが真夏の夏の夜の夢の主役登場となるのかも知れない。

儲かると思うからお金が集まるのが株式市場。
必要だとかアレを持ちたいとう欲望とは少し違った欲望に左右されている。
だから、フツーのものは価格が下がれば皆喜んで買いに来る。
ところが株式市場は、価格が下がると不安になって手が引っ込む。
未来永劫この構図は変わらないのだろう。
ところが価格の上昇局面ではどちらも一緒。
我先にと買いを出し始める。
ただ、フツーのものは高値になると諦めが登場するは株の高値は諦めどころか希望満載。
これだけ違うのが消費心理と投資心理。
おなじ心理も司るものが違うとこれだけの差が生じてくるから面白い。
日経平均株価が25000円を超えてくれば、投資心理は明らかに変わる。
眠ってたりおたまじゃくしのようにかわいく水面下にいたお金がいきなり踊りだすもの。
だったら2万円で買えばいいのにと思うのだが、価格に背中を押してもらわないと踏み出せない心理は変わらない。

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