12月3週
【推移】
15日(月):
土曜の日経では「外国人株主、内需企業にも」の見出し。三井不動やりそな、安藤ハザマなどの持ち株比率が上昇している。全体でみた外国人持ち株比率は30.9%で今年3月より1ポイント上昇。過去最大になっている。ただ売買比率は6割を超えているからまだまだアンバランス。一方で個人比率は減少継続。17.9%と3月から0.8ポイント下落した。いいとことは持っていかれてしまうだろうか。
押さえておきたい数字は原油価格の影響。原油価格が20%低下すれば産油国から消費国へ年6700億ドルの所得移転効果。これは日本経済にとって悪いことではない筈。皮相的な見方の原油安株安は拭った方が良いような気がする。
日銀短観は大企業製造業プラス12の着地でほぼ想定内。下落幅にして5日間で931円。18030円の年初来高値を付けたのは先週月曜。年末の日本株相場は終焉とみるのか、次のステップのためのすくみとみるのか。前安倍政権の時の高値18261円を見果てぬ夢とみるのか。中期的視点で見れば一里塚とみるのか。たぶん短期投資家にとってはそんなことはどうでもいいことで機械的に上でも下でも利益され上げられれば良いのだろう。
衆院戦況は与党の圧倒的勝利だったが日経平均株価は272円安の17099円と反落し約1ヶ月ぶりの安値水準。エイチーム・東京製鐵が上昇、伊藤忠・ミツミが下落。
16日(火):
原油安を背景と解釈されている株の下落。言ってみれば夢のシェール革命の否定と対ロシア消耗戦の一里塚だろうか。シェールがアメリカ再生の切り札と言われて期待感が高まったのが1年前。しかし、参加企業の一部は特損を出し、それでも米国株価は上昇。もっとも株価を決定するのは、単に原油価格ばかりではない。日経朝刊で紹介された試算。原油価格がバレル65ドル、円ドル118円が続けば名目GDPは1.8%上昇。あるいは原油安は年間ベースで10兆円のプラス効果とも言われる。この国にとっては、原油価格の下落は決して悪いことでは無い筈。それでも世界の趨勢に従って原油安→株安の流れ。どこが違うような気がするのは気のせいだろうか。
シカゴ日経先物の終値は16705円。4%の下方かい離まで来た。興味深かったのは、10銭刻みや50銭刻みになった呼値を1部の銘柄では円に戻す動き。是々非々での取り組みなのだろうが、いらないところにはいらないものをちりばめておく必要はないということなのだろう。日本証券新聞の指摘。「例年、12月相場が上昇展開に入るのは月後半。昨年も2011年も12月15日時点ではマイナス展開だった。08年も15日にプラスに転じた」。昨年は大納会までの8日で年末高値引けを達成した。
日経平均株価は344円安の16755円と大幅続落。スカイマーク・神戸物産が上昇、ヘリオス・エコナックが下落。
17日(水):
原油安・ロシア懸念。日経1面トップの見打しは「原油安、金融市場揺らす」。サブは「ロシア通貨急落、利上げ効かず」。どれもが今始まったことではない。でも不思議と新鮮な材料のような印象を醸し出すのが市場というもの。それが本物なのか偽者なのなどは斟酌することなく、ただひたすら動きに従う。そして「この指止まれ」の解釈で市場はムードに流される。たぶんこのムードというやつが曲者なのだろう。だれも頼んでないのに侵食を繰り返すムード。やっかいなシロモノでもある。代表的なのは「金融商品が売られ、安全資産とされる円が買われる」。円が安全資産と解釈するなら「消費税率を上げなければ国家財政が危機に陥る」なんて論調はどうなるのだろう。むしろ下げて困った「金」の巻き戻しを商品先物業界が狙ったとでも解釈した方が良いかも知れない。
日銀は月曜からETF3兆円買いの道に乗り出した。前日もETFを374億円買った。とはいえ株価は下落。日経平均は344円も下がった。ただ空売り比率は30%。短期的にこれだけ下げてもまだ売るモノがあるということなのだろうか。日経マーケット面では「ドル建て日経平均株価低迷、追加緩和前日を下回る」の記事。短期的な視点にしか過ぎなかろう。しかし「主役は所詮外国人」という薄いシナリオが幅を利かせているようだ。JPモルガンはS&P500の2015年の目標を2250ポイントに設定。理由は「低インフレと原油安が個人消費の改善を加速」だそうである。10月は17日が底になった。11月は17日に急落して反発した。
そして12月17日の日経平均は64円高の16819円と反発(TOPIXは小幅下落)。ただ騰落レシオは92%台まで低下した。関電・中外薬が上昇、資生堂・JTが下落。
18日(木):
1〜11月の訪日外国人客数は前年同期比28%増の約1218万人。単月の訪日客は9ヶ月続で100万人を突破した。年1300万人を上回る勢いで伸びている。一方出国日本人数は6ヶ月連続で前年実績下回った。どちらも円安の影響との指摘が聞かれる。少額投資非課税制度(NISA)の2014年分の非課税枠使用は国内株は25日が最後の申込日。外国株や海外資産で運用する投資信託は最終の発注日が前倒しとなる。だから18〜19日が最終日となるファンドもあるという声も聞かれる。注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明では「相当な期間」は残り、「忍耐強く」という文言も入った。市場への配慮というところだろうか。原油安の落ち着きもあり、エネルギー関連株が上昇しNY株式は288ドル高となり4日ぶりの反発。
日経平均株価は390円高の17210円と大幅反発。「一足早い議長のクリスマスプレゼント」という市場の声もあった。イエレンFRB議長発言は金融緩和と引き締めの両方に配慮した内容で「利上げの前倒しはない」と読んだ株式投資家の間には安心感広がった格好。Jマテリアル・ユシロが上昇、スカイマーク・オンワードが下落。
19日(金):
政府緊急経済対策は3.5兆円規模で編成する方針となり27日にも閣議決定し補正予算に盛り込む方向。一方でNY株式市場は、大幅続伸。NTダウとNASDAQ総合指数の上げ幅は2011年11月以来の大きさとなった。S&P500は2013年1月以来の大きさ。これを受けて日経平均株価は411円高の17621円と大幅3日続伸。日銀金融政策決定会合は現状維持で為替は119円台まで円安傾向。石塚硝子・セイコーが上昇、マーベラス・パーク24が下落。
(2) 欧米動向
リーマンショック以降に登場した悪材料の多くは、本当の理由ではなく、基本は米国経済と米国金融動向に左右されてきたのが株式市場。
だとすると、今回の下げもやはり表面に出ているのは原油で、主役は米国金利動向と考えた方が素直に理解できるかも知れない。
世界の出来事の解釈は、その時折によって「変だ、妙だ」と思ってもどうしても世界的思考法に流されるのが常。
雇用統計でパート比率が上昇し、労働時間があまり増えないのは、オバマケアによる医療保険を避けるための企業努力の裏返しなんてことは滅多に指摘されない。
本来は原因や理由があるにもかかわらず、表面だけを撫でることが多いので、相場はさらに見えにくくなっているのだろう。
(3)アジア・新興国動向
日曜日経1面では「東南アジア賃金、中国に迫る」の見出し。進出企業の負担増がそのうち話題になるのだろうか。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
22日(月)コンビニ売上高、米中古住宅販売
23日(火)天皇誕生日で休場、米GDP改定値、耐久財受注、新築住宅販売件数
24日(水)米7年国債入札
25日(木)11月企業向けサービス価格指数、クリスマス
26日(金)失業率、消費者物価、鉱工業生産
株式市場関係者が選んだ企業10大ニュース。
1位アマダ(6113)。利益をすべて株主に還元すると発表。
2位住友商事(8053)シェール開発の失敗などで2700億円の減損損失を計上。
2位トヨタ(7203)今期連結純利益が初の2兆円に。
4位三井物産(8031)初の自社株買い実施。
4位春の労使交渉でトヨタ(7203)など主要企業がベア実施一斉回答。
6位ファーストリテ(9983)「ユニクロ」で初の一斉値上げ。
7位ベネッセ(9783)顧客情報を大量流出
7位トヨタ(7203)世界で初めて燃料電池車を一般向けに発売。
9位ソフトバンク(9984)傘下のスプリントによるTモバイル買収が白紙に。
9位横浜銀行(8332)東日本銀行(8536)が経営統合の方針。
GPIFによる株買い、日銀によるETF・REIT買い。
禁断の実を食べ始めた以上、もう後戻りはできないという現実は結構重く評価されるべきなのだろう。
皮相的な「ツーリスト投資家」に代表される3泊4日投資家の往来に右往左往する市場。
一方で、持ち株比率が20%を割りますます現金比率が高まってきた個人投資家。
投資する銘柄には事欠かないのだろうが、同じ視点でみられているのが株式市場かのかも知れない
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