11月第3週
【推移】
10日(月):
4〜9月の上場企業の経常利益は1割増。通期では2%程度増にしか過ぎないが、おそらく上方修正になってくるのだろう。
先週末までに決算発表を通過したのは1106社。
数で全体の7割、時価総額で全体の9割。
製造業の増益率は13%、非製造業は6%。増益企業数は全体の6割。減益企業数は全体の4割。もっとも全体の経常利益増加額は約1兆3400円の増加。
そのうちソフトバンクやトヨタなど上位10社で1兆1000億円。
1%が9割を稼ぐ構図は確かにいびつ。
しかし日経平均株価16880円÷PER16倍=1055円。
1株当たり利益はようやく1055円まで上昇してきた。
ここは大切なところとなる。日経平均株価は99円安の16780円と反落。
サンゲツ・ケーヒンが上昇、タカタ、蛇の目が下落。

11日(火):
景気悪化→消費増税見送り→株高。
これが当面の相場の解釈。景気良好→金融緩和縮小→金利上昇懸念→株安。
このチョッと前のアメリカのシナリオとは逆の構図。
しかしNYは金融緩和縮小スタート以降、景気良好を素直に評価しての株高での最高値更新。結局基本になるのは枝葉ではなく幹の景気の動向。となると、消費増税見送り→景気好転→株高のシナリオがどこかで登場しなくてはいけないだろう。
日経平均株価は343円高の17124円と反発。シチズン・島津が上昇、サンドラッグ、住友ベークが下落。

12日(水):
世界的に明るい傍証の一つは「英国と米国の規制当局と金融機関の和解」。
外国為替市場で大手銀行による談合と価格操作があったとされた問題に関してである。
1年にわたる調査を踏まえ金融機関に多額の制裁金を課すことになったとの報道。
対象はUBSとバークレイズ、RBS、シティグループ、JPモルガン、HSBCの6行。合計で15億ポンド(24億ドル)と見積もられる制裁金支払いに合意する見通し。
これは外為市場における銀行の不適切な行為をめぐる問題で、初めて当局との和解が成立。ウォールストリート・ジャーナル紙も同様の報道。スイス金融市場監督機構がUBSの職員および元職員約10人に、外為市場における不正行為について行政処分を科す可能性があるとの通達を出したという。
経済が落ち着けば、金融当局と金融機関のバトルも収まるもの。事の次第は別にして明るい兆候である。「出入りの激しい相場」というのが市場関係者のコメント。
「東証1部の値下がり銘柄数は1100を超えたが指数は上昇。
日経平均(上昇率プラス0.41%)がTOPIX(プラス0.13%)をアウトパフォーム。為替の115円台後半への弱含みを背景に日経平均株価は72円高の17197円と続伸。アイロム、セイノーが上昇、熊谷、カネカが下落。

13日(木):
11時まで上昇して下落、後場寄りから13時まで上昇して下落。
このリズムが続くのかどうか。どちらかと言えば後場の魔笛に一喜一憂というところか。いずれにしてもフォーカスは消費税引き上げと解散。
先日のパリバのレポート「増税延期と言うサプライズ」。シナリオは3つ。
(1)確率30%、増税延期・経済対策3兆円・衆議院解散=日経平均19000円、ドル円120円
(2)確率30%増税延期・経済対策3兆円・衆議院解散なし=日経平均18000円、ドル円117円
(3)確率40%増税実施・経済対策7兆円程度=日経平均16000円、ドル円110円。
ただ数日を経てこうなってくると(3)の確率は限りなく低下。
むしろ(1)の可能性が45%程度に上昇した格好。
マスコミチック、あるいは市場関係者チックには(1)の確率が90%以上のような論調。9月のメジャーSQ値は15915.98円。10月のSQ値は15296.37円。
因みに前日後場の日経平均先物は一時17470円まで上昇。
3連休中のCMEでつけた幻の高値17440円を抜いた。
「バスに乗り遅れるな」の群集心理が台頭しての結果かも知れない。
このまま行くと今月のSQ値は前月比2000円以上の変動となる。
2000円以上の変動は下落ではあったが、上昇では02年まで遡る。
2002年2月SQ値9606円→3月SQ値11778円(2172円の幅)。
98年1月SQ値14828円→2月SQ値17244円。
97年4月SQ値17572円→5月SQ値20276円。
日経平均株価は続伸。
前日の高値17433円に届かなかったものの終値ベースでは7年1ヵ月ぶりの高値。
東証1部の売買高は11日連続で2兆円を上回った。
そして時価総額は503兆円。
単純平均株価の307円だけが貧しく映る。
日経平均株価は195円高の17392円と3日続伸。洋ゴム、Pビッツが上昇、コロプラ、クックパッドが下落。

14日(金):
気にかかるのは鶏卵価格の横ばい傾向。
昨年は年後半に8割上昇した。特に11月には2割超の上昇だった。
そして株価は大納会高値。今年は10月までは昨年を上回って推移したが、ここ2ヶ月動きなし。卵価格が株価の先行指標というアノマリー的には株価高止まりの傾向なのかも知れない。 日経平均株価は98円高の17490円と4日続伸。ネクソン、化工機が上昇、第一汽、リクルートが続落。

(2) 欧米動向
米雇用統計通過。
非農業部門雇用者数は21.4万人増での着地。
市場予想は23.5万人増だったからやや不満足かも知れない。
が、それでも20万人以上の増加。
9月分は24.8万人→25.6万人、8月分は18万人→20.3万人に上方修正。
失業率も5.8%と08年7月以来の水準まで低下。
リーマンショック後のピークは10%だった。
少なくともアメリカの雇用は悪くない。
一方でウクライナが騒がしいし、イタリアの国債利回りも上昇。
米国が落ち着けば、材料を他に求めたがる傾向は変わらない。
まさにドラクエのモンスターのように登場する。
しかしリーマンショック以降登場したモンスターは所詮幻影ばかりだったのが歴史。

(3)アジア・新興国動向
安定して見える中国情勢よりも、ロシア動向に注意という格好。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・

17日(月) 7〜9月GDP、首都圏マンション販売、米鉱工業生産
18日(火)日銀金融政策決定会合、米生産者物価、ロス自動車ショー、独ZEW景況感
19日(水)黒田日銀総裁会見、訪日外国人数、米住宅着工件数、FOMC議事録
20日(木)10月貿易収支、コンビニ売上高。
BBレシオ、ボージョレヌーボー解禁 、米中古住宅販売、中国HSBC製造業PMI
21日(金)メキシコGDP

今回の追加金融緩和とGPIFの運用変更発表が同じ日の午後になったこと。
たまたまと言っていますが、それはないと思います。
何しろ、GPIFがこれまでの国内債券の運用を大幅に減らすということは
長期国債を30兆円強市場に売ることを意味します。
その受け皿として日銀が年間長期国債の購入をほぼ同額増やしたことは
まず間違いないでしょう。
更に勘ぐれば、黒田さんが長期国債にこだわるのは、国の金利負担を考慮してのことかもしれません。

あるストラテジスト氏の見解。
まずは、「バブル」についての議論。
アメリカでベースマネーは20%程度伸びているがM2の伸び率は6%台。
市中にマネーがべらぼうに出回っておらず、QE3終焉の影響は少なかろう。
一方、日本ではベースマネーは40%近く伸びているのにM2の伸び率は3%台。
3%というのはいかがなものなのだろうか。
少なくともアメリカ並みの6%程度になってくれれば・・・。
平成バブルの頃には13%程度まで伸びていたのが歴史。
ということは、バブルの再来を危惧する向きにとっては、M2が7〜8%程度になって警戒。
10%を超えて超警戒ということになろう。
ならば3%台ではまだまだ・・・。
もうひとつは黒田日銀金融緩和についての別の見方。
黒田氏は元財務官だから、財務省が消費増税としやすいように緩和を行ったというのが通説。
あるいは、GPIFの国内債券比率引き下げの受け皿として国債購入枠を拡大した。
ところが・・・。
消費増税引き上げ見送りとなると、日本の財政危機を見越しての国債ウリは出てくる。
ここが海外投資家の懸念ではある。
しかし、その国債ウリを日銀が吸収してくれるならば、消費増税見送りでも構わない構図。
だから海の外からは消費増税延期やむなしの声も聞こえてくるのではなかろうか。
本来、消費増税の呼び水のために行った追加の金融緩和。
それが消費増税延期のトリガーとなったかも知れないという皮肉的側面。
壮大なパラドックスになってこようか。

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