09月第2週
今週の相場感
1日(月)
興味深い解釈は債券市場。週末の10年国債利回りは0.490%と小幅に上昇(価格は下落)。「朝方発表された経済指標が市場予想を下回り、消費増税が難しくなった場合の財政リスクが警戒されて売りが優勢となった」。経済指標が市場予想を下回ったのは4月の消費増税が原因の一つ。しかし更なる消費増税が難しくなると、国家財政の危機が来る。経済が悪化し、その上国家財政の危機。そして金利の上昇がここに加わる。まさに負のスパイラルなのだが、どうも違和感がある。逆に、4月の消費増税はなかったならば経済指標は良好だった筈。たぶん株価の上昇で税収も増えていた筈。自己矛盾を孕んだ世界解釈にはどこか違和感。一方でGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の4〜6月期決算。積立金に占める国内株の比率は16.8%。3月末から0.9ポイントの上昇となった。7月以降の買い増し余地は約3兆円。しかも9月には20%以上に引きあがる予定。逆に国内債券は51.9%と国内債券の下限のメド52%を初めて下回った。海外商品への投資も積極的でドル建てで買うので円売り要因。7月以降少なくとも13.7兆円の円を売るという試算もあり、為替は円安方向との解釈。日経朝刊では「都心の大型物件取引活況」の見出し。「リーマンショック以降に取引が停滞していた都心の大型不動産が動き始めた。目黒雅叙園を森トラストが買収。丸の内のパシフィックセンチュリープレイスをシンガポールのGICが買収の最終交渉。 米ジョーンズラングラサールの調査では海外から日本のオフィスや商業用不動産への投資額は今年1〜3月に1兆2540億円。 前年同期比28.5%増となった。都市別でみると、東京への投資額は世界1位」。東京不動産が活況ならば時計回りで日本の不動産は投資対象となってくるに違いない。 日経平均株価は52円高の15476円と3日ぶりの反発。コンベア、古河電池が上昇、セガサミー、日新製鋼が下落。

2日(火)
ル円と株。ニワトリとタマゴながらどちらが先だったかと言えば数分差で株。でも解釈は「為替の円安好感」だから不思議なもの。あるいは、年金運用に積極姿勢の塩崎氏が厚生労働相就任の報道も材料視との解釈。だったらどうして寄り付きではなく10時を期して上昇が加速したのか理解不能。結局レーバーデー明けで参加者が戻ってくるとの期待感だったのだろうか。日経平均株価は192円高の15668円と続伸。東証1部の売買代金は1兆9744億円で17日連続の2兆円割れ。マネパ、化工機が上昇。内田洋行、Klabが下落。

3日(水)
日銀が買い入れ対象としているETFは8本。(1305、1306、1320、1321、1329、1330、1346)。これらの時価総額は約8.3兆円。年末までに日銀が3.5兆円を買ったとすると日銀が占めるシェアは40%を越える。となるとETFは更に本数が増える可能性大。となると当然株高期待となる。あるいは年金の運用姿勢からの円安期待論。先週発表された6月末時点の運用実績で外債は10.6%、外国株は15.54%。3月末が外債10.66%、外国株15.03%。それほど大きな変化が見られなかった。9月に運用方針が変更されれば更に外債・外国株は買い増す方向。市場の試算では11兆〜15兆円の円売りドル買い需要とも。とってつけた解釈はアチコチで聞かれるが事の真相はいつも藪の中。東証一部の売買代金は2兆688億円。8月8日以来2兆円超えとなった。一方で東証2部指数の連騰記録は15日で途絶えた。東証2部指数が9連騰以上したのは2010年12月以降今回以外で9回。連騰記録が途絶えたあとの日経平均の5日間の騰落はよくないという。アノマリーを打ち消してきた相場だけに踏襲はしてほしくないもの。もっともJPX400は順調の年初来高値を更新。日経平均と主役交代しても良いような気がするし、まだ先物市場がないだけにマトモな推移。ただ11月に先物が始まるとおかしくなるのかも知れない。日経平均株価は59円高の15728円と3日続伸。1月22日以来の高値水準まで戻してきた。「内閣改造後の追加的経済対策への期待感)との解釈。ルネサス。大和小田急が上昇、DNC、オーバルが下落。東証2部指数は16日ぶりに下落。

4日(木)
このところの上昇はアベノミクス再評価という声も聞かれる。塩崎氏が年金運用の積極論者だからという解釈も聞かれた。円安トレンドはそれに拍車をかけた面もあろう。15375円のプットオプションの売りは完全に儲けとなった。今週は16250円程度のコールの買いが目立ったという指摘もある。ただ、考えてみるとどうも事の真実はソコではないような気もする。地政学的にみれば一番大きかったのはインドのモディ首相の来日と親密感ではなかろうか。中国を挟んで立地するインドと日本。経済的な結合の高まりは地政学的には中国にとっては楽しくはない。伏線は福田元首相と習氏の会談にもあったと思われるが、中国の対日感の軟化は予測できる。となると東太平洋の地政学は比較的安定する。どうもこれが背景であるような気がしてならない。援軍は8月29日付けのFT紙の社説「安倍首相は軌道から外れるな」。必要な対策として挙げられたのは(1)一段の金融緩和(2)消費増税の延期(3)労働市場改革。「今、寄り道をしている余裕はない」というのがFT紙の主張。海の外から「消費増税の延期」を言われれば相場は間違いなく反応する。これも大きかった、というのが後講釈。小さな活字だが、覚えておきたいのが「投信資産額首位交代」。12年間もトップだった国際の「グロソブ」。 フィディリティの「USハイイールド」が抜いたのは今年4月。9月2日時点の純資産は1兆3174億円。これを抜いたのは新光の「US−REIT」。1兆3180億円でトップになった。当然、円安傾向も追い風なのだろうが債券ではなく不動産という流れが出てきている。 日経平均株価は52円安の15676円と4日ぶりの反落。ファーストリテ、住友が上昇、ソフトバンク、ダイキンが下落。

5日(金)
海外ではECBが政策金利を引き下げ過去最低の0.15%となる。資産担保債権の買い入れも開始の方向でドラギマジック満載の状況。国内では安倍改造内閣への支持率は60%との調査結果。そう悪い環境ではないが、株価は軟調な週末となった。日経平均株価は7円安の15668円と小幅続落。為替の1ドル105円台後半を背景に一時100円以上上昇した場面もあった。トヨタ、日立、アキレスアが上昇、ソニー、古河電池が下落。

(2)欧米動向
明るいアノマリーはS&P500の大台変わり。
過去大台を変えた後30日のパフォーマンス。
1995年500ポイント→プラス4.6%。
1998年1000ポイント→プラス7.9%。
2007年1500ポイント→プラス2.0%。
今年8月に2000ポイントを越えたからその後30日に期待ということだろうか。それにしてもアチコチ良くデータを持ち出してくるもの。

2000年以降、NASDAQ100のETFを9月に買って12月の年末最終日に売ったとすると勝率は80%と言われる。マイナスだったのはITバブル崩壊の2000年とリーマンショックの2008年、そして2012年の3回だけ。となると、レーバーデイとともに年末に向けてのラストスパートが始まると考えても良いのかも知れない。もっともいわゆるアノマリー的なものがことごとく打ち破られてきたのが今年。
「最悪」が踏襲されるのか、「万が一の最悪」を買いに行くのか。そもそも「暴落」は予期せぬ時にやってくるもの。「8月は良くない」と言われてそれほどよくなくなく」、「9月は最悪」と言われて最悪でない可能性は結構高いような気がする。不思議なことに市場論調は「売り目線」が少なく「買い目線」でのコメントが多いような印象。「下がった時に売りたくなるのが株、上がった時に買いたくなったり売りたくなったり するのが株」という奇妙な習性は依然健在なのでしょうか。「買った瞬間に陥る不安」は「売った瞬間の安心感と警戒感と空虚さ」につながるもの。この繰り返しが長い間相場を作ってきたという歴史の積み重ねの心理はなかなか変わりようはない。


(3)アジア・新興国動向
中国の経済統計がどうのこうの言ってはいるが、上海総合株価指数は高値圏。モラトリアム的な世界的低金利が新興国に追い風になる場面もあろうか。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・。

8日(月)
景気ウォッチャー調査、4〜6月GDP改定値、中国貿易収支
9日(火)
マネーストック、アップルi−Phone発表予定、
米3年国債入札
10日(水)
企業物価指数、機械受注、夏季ダヴォス会議(天津)、
米卸売り在庫、米10年国債入札
11日(木)
法人企業景気予測調査、都心オフイス空室率、米財政収支
中国生産者・消費者物価、国際捕鯨総会(スロベニア)
12日(金)
黒田日銀総裁会見、メジャーSQ、米小売売上高、
ミシガン大学消費者信頼感


SQ前の売り方の抵抗をどう見るか。
メジャーSQに向かっての最終局面。
因みに6月メジャーSQ値は14807円。
3月メジャーSQ値は14429円。
今年1月が15784円、昨年12月メジャーSQ値は15303円。
とりあえずは15000円台のSQ値をキープといったところだろう。

9月アノマリーの一つ。
第1週の株価がそのまま月間のパフォーマンスと一致する。
つまり第1週が高ければ9月は高いということ。
過去10年を振り返ってみると・・・。
2013年第1週プラス3.52%→月間プラス7.96%。
2012年プラス0.35%→プラス0.34%。
2011年マイナス0.04%→マイナス2.84%。
2010年プラス3.28%→プラス6.17%。
2009年マイナス2.91%→マイナス3.52%。
2008年マイナス6.58%→マイナス13.86%。
2007年マイナス2.69%→プラス1.30%。
2006年マイナス0.04%→マイナス0.08%。
2005年プラス1.50%→プラス9.35%。
2004年マイナス0.53%→マイナス2.33%。

一応9月のアノマリーというのもある。

外国ヘッジファンドの利益確定売りが多い。
日経平均株価採用銘柄定期見直し。
21日ぐらいから高配当銘柄狙い。
22日から上がりやすい。
25日前後の配当落ち日から月末までディラーは持ち株が無く需給はよい。
下げても売る現物がないので下げにくい。
中秋節以降は上がりやすい。
借株の返却(空売りの買い戻し)がある。
13日前後に下げたときに買い15日に売るシナリオもあり。

外国人機関投資家向け日本株セミナー開催の時期。
3日〜9日が東京でみずほ証券。
8日〜12日が東京でバンカメ・メリルリンチ。
15日〜19日が香港でCLSA。
特に有名なのがバンカメメリルの400人規模のセミナー。
今年で11回目だが場所が例年と同じグランドハイアット東京。
舛添東京都知事が「東京五輪と国際金融都市としての東京の未来」の講演。
太田弘子元経済財政相が「アベノミクスと成長戦略」の講演。
そして投資家向けツアー。
「京都テクノロジーツアー」では村田、京セラ、日電産、ロームを訪問。
「Goverment Tour」では官公庁、日銀、自民党を訪問。
「Caterpillar Factory Tour」では兵庫県の工場。
「Redevelopment+Tour」では虎ノ門、渋谷、品川を訪問。
「東京コンドミニアム(選手村)再開発ツアー」
「東京ディズニーツアー」
「ファナックツアー」、「カジノ・パチンコツアー」などが用意されている。
それぞれ日本の市場を代表するテーマでもある。
「9月は最悪」なんて言っていられない雰囲気。



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