08月4週
推移
11日(月)驚愕、戦慄、カラ騒ぎ。オバマ大統領のイラク攻撃宣言を材料にして下げてはみたものの、NYはそ知らぬ顔。しかも実際にイラク空爆は実行されたが株価は上昇。挙句の果てはウクライナ近辺のロシア軍の演習終了好感との解釈。巧妙にツボに嵌った印象は拭えない。騙しと欺瞞に満ち満ちた世界では、自分の本能だけしか役立たないのかも知れない。だから他人の解釈は意味がないのだろう。ピーターリンチ氏は「株価に一喜一憂しない」と言う。あるいは「株価の今日や明日、あるいは来週の動きは単なる気紛れ」とも。人道的見地は別にして、冷酷に観察すれば武器弾薬の在庫一層シナリオがまた甦ったとすれば、米軍イラク空爆は悪材料視ではなかろう。週末段階の日経平均は14778円で25日線から3.7%のマイナスかい離。騰落レシオも78%まで低下した。SQ値は15036円で、上に幻。4ヶ月ぶりに下振れて、SQ後1敗。しかし「空恐ろしさを豊かさに」はまだ生きている印象。むしろ長期金利が5%まで低下したということは債券バブルのピークだったかも知れない。日経平均採用銘柄のPERは14.29倍。EPSは1034円でなかなか1050円を越えられないのも現実。PBRは1.28倍。東証2部のPERは14.71倍、PBRは0.88倍。株式益回り6.58%。月刊文春9月号の「アベノミクス第二章起動宣言」。サブタイトルは「経済成長こそ私の政権の最重要課題」。「経済に興味を失うことはありません」と安倍首相は語っている。多少の期待感はあったのだが、どうも具体性に欠けている。市場という妖怪を相手にする気構えならば、もっとデモーニッシュな宣言が欲しい印象。日経平均株価は352円高の15130円と大幅反発。株価の上昇の裏側で東証1部の売買代金は1兆8608億円と低下。4日ぶりに2兆円を割り込んだ。ソフトバンク、ファナック、フルキャストが上昇、キトー、やまびこが下落。
12日(火)結果論なら誰でも言えるのが株式市場。週末の下落、そして週初の上昇。結局、過敏な反応が連鎖しての下落に対する巻き返しという結果。物事の渦中では物事の本質を見失うことが多いもの。そして、その本質から離れたところで、右往左往するもの。市場関係者のコメントも多くがトレンド追随型なので、下げれば弱気、上げれば強気の繰り返し。万年弱気、万年強気というのは別にして、このトレンド追随というのが厄介といえば厄介。相場格言は「変だ、おかしいに買い(売り)迎え」。アメリカの大統領がイラク空爆を容認したということは、米経済にそれだけ余裕が出てきたとも読めるもの。だったら「やはり売りはおかしい」というのが結果論だろう。出ては消える45日ルールや、日々大量の先物売買を行い結局ポジションの傾きのない欧州系の手口などに一喜一憂し、驚くことは、それこそ主役の思う壺。ああだこうだと材料を並べ立てて思惑をあらぬ方向へ持って行ってくれることで、逆に主役の術中に陥ることも多いもの。
ある意味、板や手口なんて気が付かれてナンボの世界。騒ぎたくなるところを敢えて黙って無視する強い意志が持てるかどうかが、相場を生き抜くコツなのかも知れない。日経平均株価の高値は15235円。8日の急落の前日終値15232円を一時回復した。8日の安値が14753円だから2日で500円あまりの上昇。エレベーターで下って昇っての繰り返し。ウクライナもガザもその他もろもろ対して進展も変化もしていないのに、解釈で動く相場の面目躍如。日経平均株価は30円高の15161円と小幅続伸。コロプラ、Klab、マーベラスが上昇、ハピネット、日成ビルトが下落。
13日(水)8月はイベントとファンドの解約に振り回されやすい月。アノマリー的には「NYでは8月相場の最初の9日間は弱い」。
07年8月のパリバショックの前触れだったのはGSのファンドの解約観測。旗艦ファンドの解約が他のファンドの解約への誘い水となり、結局我先のファンド解約合戦。そういう時期でもある。GDPの発表待ちの見送りモードで動意薄なんていっていたのが火曜。年率換算ベースで6.8%低下と市場予想よりも悪化せず着地したのに売買代金は低下。ということは、「GDPなんて待ってなかった」に他ならない。そもそもGDPの発表で相場が動くなんてことは滅多にないもの。それを誰かが「GDPを待っている」なんていうから、いつものように「この指止まれ」。こういう欺瞞チックなコメントは発するほうは便利だが、受け取る方には邪魔なもの。 日経平均株価は52円高の15213円と3日続伸。関東電化、蛇の目が上昇、アルバック、リブセンスが下落。
14日(木)日経1面では「景気、緩やか回復続く」の見出し。7〜9月のGEP成長率の民間予測の平均値が4.4%と指摘されている。毎年初の「びっくり十大予想」で有名なバイロン・ウィーン氏。12日の米CNBC「クロージングベル」に出演。「年内にS&P500指数が20%上昇する可能性がある」とコメントした。ということは、年末には2300ポイントということになる。イスラエルやウクライナ、イラクなどの地政学的イベントは来年にかけて緩和されよう。今は、都合よく地政学的リスクが機能している」。その上で「今後の注目はバイオセクター」とも。さほど話題にはならないが、MSCIの定期見直しが発表された。日本株全体では129億円の資金流入の予定。新規採用は西武HD(9024)1銘柄だけ。売買インパクトでは西武HD(9024)、ジャパンRE(8952)、IHI(7012)、オリックス(8591)、ビルファンド(8951)などが上位。その他増加銘柄は神戸鋼(5406)、名鉄(9048)、カルビー(2229)、グリー(3632)、ソニー(6758)など。一方減少銘柄はクボタ(6326)、群馬銀(8334)、ヤフー(4689)、アステラス(4503)、物産(8031)、中国銀(8382)など。8月29日の終値ベースで反映されることになる。NYダウの2週間ぶりの高値など外部環境の好転を反映し、日経平均株価は100円高の15314円と4日続伸。ソフトバンク、鉄建などが上昇。アイフル、アルバックが下落。
15日(金)日経1面では「ソニー、車の目、参入」の見出し。同社は走行中に周囲の状況を確認する「目」にあたるカメラ用の画像センサーに参入し、2015年に量産開始の方向とされる。車のIT化は更に進展しビジネスチャンスということだろう。また「京急、家事の参入検討」の記事。この方向性は今後も見逃せない。日経1面では「目ざめる資本」の特集記事。見出しは「アマダを探せ」、利益をすべて配当と自社株買いに回すと発表したことで外国人投資家の見る目が変わったと紹介されている。「アベ」「クロダ」と並んで「アマダ」は「次のアマダを探せ」と言うキーワードの一翼を担っているという。「バブルが崩壊して25年。株式時価総額はピーク時を150兆円下回る。株価を上げ、これを取り戻す。企業と株主と政治がここまで意識を一つに重ねることはなかった」という綺麗な記事。日経平均株価は3円高の15318円と小幅ながら5日続伸。日経ジャスダック平均株価は3日、マザース指数は5日続伸。星光PMC、西尾レントが上昇。ボルテージ、木曽路が下落。
(2) 欧米動向
外部環境と言うよりは、ファンドの運用の下手さがクローズアップされている。
運用成績の悪化を背景に人員削減に踏み切るヘッジファンドが出始めているという。
株価が最高値水準の市場での運用稚拙というのはよほどのこと。
もっとも、年初に金利上昇債券下落のシナリオを採用したファンドは完全な読み違い。
あるいはアルゼンチン債での運用も裏目。
挙句の果てには、カリフォルニア州職員退職年金(カルパース)。
リスクの高い投資を減少させると表明。
ヘッジファンドでの運用をさらに縮小の方向となった。
興味深いコメントもある。
「米国の年金基金は歴史的な株高により積み立て不足が解消。
機械的に株売り債券買いのスタンスを取っている」。
元手を取れば、あとは安定運用というのは、運用者としては当然もある。
しかし多くの年金がこのスタンスを真似ると、債券が買われ金利は上がらない。
意外感のある金利低下の背景はここにもあろうか。
(3)アジア・新興国動向
21日発表予定のHSBC製造業PMIを待つ動きが出る可能性はある。しかし、当面上昇基調にあり懸念は薄い。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
18日(月)米NAHB住宅指数
19日(火)米消費者物価、住宅着工
20日(水)7月貿易収支、コンビニ売上高、米FOMC議事録
21日(木)米中古住宅販売、フィララデルフィア連銀製造業景況感、中国HSBC製造業PMI
22日(金)ジャクソンホール金融・経済シンポジウム(〜24日予定)
今度は中国のHSBC製造業PMIとジャクソンホールを巡ってのアレコレ。
どうせ通過してしまえば忘れるのに懲りない面々は多い。
為替と相場。
円安→株高、円高株安というのが定説。
しかし本当はどうなのだろうか。
円が1ドル=360円の固定相場から変動相場に移行した際の日経平均。
1971年8月の変動相場制移行で日経平均は急落。
しかし翌年早々には高値を奪回した。
そして過剰流動性相場が演出され株価は1年4カ月で2.5倍。
次が1985年のプラザ合意前後の円相場。
85年9月22日のプラザ合意前には1ドル=240円台。
翌年4月には160円台まで円が急騰。
「円高不況」と言われる時期となった。
円高対策、景気対策の効果もあり、株価は円急騰が一服してから急上昇。
バブル相場のスタートとなった。
日経平均は12000円台から1989年の最高値38915円まで急騰、
「トリプルメリット」(円高・低金利・原油安)が合言葉での第2次過剰流動性相場。
しかし・・・。
1995年年初から上昇した円相場。
4月19日の79円75銭で当時の史上最高値をつけた。
9月には100円台まで急反落しその後は緩やかな円安局面。
株価は円高と歩調を合わせるように1995年年初から急落。
日経平均は6月には1万5000円割れ。
しかし、円高から円安に基調が転換したとたんに切り返し22000円台。
1年間で56%の急騰相場となった。
その都度都度、為替と株価の解釈は異なるものという印象が深い。
しかもこの30年は、円安株高が優勢。
でも、変動相場に移行した1970年代は円高株高。
トリプルメリットだって半分は円高株高。
この循環いつ戻るのかが課題。
永田町や霞ヶ関に魅力的に映っているのは、この「歴史的な株高による積み立て不足解消」。
海の向こうで起きたことに対する期待や切望が失望になって欲しくはないものだ。
もっともアメリカで起きたことは日本で起きるというスタンスに立つと・・・。
日本のバブル崩壊(1989年)から約20年後の2008年にアメリカのバブルは崩壊した。
この時間軸に従えば20年後には夢が実現する可能性はあろうが、そんなに待てないもの。
因みにパリバ証券のGPIF基本ポートフォリオ変更予想。
現在12%プラスマイナス6%の国内株は「22〜25%」。
現在60%プラスマイナス8%の国内債は「40%」。
GPIFと国家公務員共済、地方公務員共済、私学共済を合わせた試算で想定すると・・・。
国内株20%→最大5.6兆円の資金流入。
国内株22%→最大8.7兆円の資金流入。年末の日経平均16000円
国内株25%→最大13.5兆円の資金流入。年末の日経平均17000円。
国内株30%→最大21.5兆円の資金流入。
計算だけは誰もが出来るのだが・・・。
12日の日経夕刊に興味深い記事。
見出しは「米パイプライン大手、投資事業を統合
7.2兆円、シェール鈍化で」。
米石油・天然ガスパイプライン大手のキンダー・モルガンは総額7.2兆円で統合すると発表した。
投資事業体はマスターリミテッドパートナーシップ(MLP)と呼ばれる投資ファンド。
「シェール事業が鈍化するとの懸念から投資妙味が薄れる」というのがその理由。
キンダーは米シェールブームを資金面で支えておりMLP活用の先駆者だったという。
パイプ事業者にとって、成長余地が縮小しつつあるという。
長期的にシェールガスのパイプ事業の拡大は厳しいという見方。
アチラコチラでばら撒かれている「バラ色のシェールガス革命」に陰りの印象。
小さな記事から全体像が見えることもたまにある。
あまりシェールで踊らない方が良いかも知れない。
従来の市場解釈は「エネルギーコストの低下で潤う米国経済」。
あるいは「シェールガスが米国経済を救う」。
しかし、もしこの報道の通りであるならば「エネルギーコストが低下しない米国。
行き詰るシェールガス革命。
先行きの暗い米国経済)と化してしまうのかも知れない。
となると・・・。
「米株高に東京連れ高」ではなく、「NYからの逃避資金の行き場としての東京」のシナリオ。
悪くはない。
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