06月3週
【推移】
9日(月)
微妙な玉虫色の交錯ばかりの市場観測。雇用 統計を通過して今度は日銀金融政策決定会合、そしてメジャーSQ 。米国の小売売上高や中国の各種経済指標などもスケジュール視さ れている。日経の「市場アウトルック」も玉虫色。結論は「高値警 戒で上値が重い展開か」として「上値では利益確定売りが膨らみそ う」。と言いながら「15000円近辺では押し目買いも入る見通 しだ」。そして「今週も米国景気への期待感が日本株の支えになり そうだ。GPIFが株式運用の拡大を検討していることも引き続き 買い材料と受け止められそう」。
また「騰落レシオは1年ぶりの高水準。上値では売りも膨らみ、伸 び悩む可能性が高い」といいながら、結びは「株主還元を強化する 銘柄を個別に買う動きは続きそうだ」。強気なのか弱気なのかよく わからない。確かに警戒感は否定しない。騰落レシオは126%台 で昨年7月24日以来10日月半ぶりの水準まで上昇。そして業種 別日経平均株価の「銀行」が12日連続での上昇。1985年2月 の13日連続続伸以来の長さとなった。「金融株は景気回復で恩恵 を受ける大本命」という声も聞かれている。一方で空売り比率は2 8.9%台と3ヶ月ぶりの水準まで低下。メジャーSQに向けての買 い方有利の展開と見たいところ。
興味深いのは市場関係者の上値予測。概ね「17500円〜185 00円」という数字が出てきた。特に根拠が明確な訳でもない。時 価に1000円〜2000円スライドさせただけに見えるのは気の せいだろうか。日経平均株価は46円高の15124円と反発。日 経JASDAQ平均は13日連続での上昇。2012年2月以来の 続伸となった。エムアップ、エイチームが上昇。熊谷組、SUMC Oが下落。

10日(火)
松井証券経由の信用評価損益率は売り方マ イナス9.8%、買い方マイナス5.8%。 空売り比率は先週末に ようやく28.9%まで低下し昨日は28.5%。日経平均株価の 15000円台滞在日数は前日まで5日連続。4月が2日、3月が 4日、2月が1日でした。あとは11月から1月にかけての30日 以上に及ぶ滞在日数に挑戦できるかどうか。その間、12月のメジ ャーSQ値は15303円でしたから、ここが分水嶺かも知れない 。
NYダウとS&Pは過去最高値を更新中。DAX指数は10000 ポイントに乗せこちらも過去最高値更新中。市場では「グローバル ラリー」なんて言葉も聞かれる。別にグローバルラリーに同調する 必要はなかろうがそのうちまたサマーラリーなんて言い出すのも株 式市場の経験則。
日経1面は「ユニクロ初の値上げ」。原料高を転嫁し、8月から5 %の値上げをするという。デフレ経済の代表だったようなユニクロ のこの変身。中国で行き詰まり、モンゴルからカシミアを移入した ようなウルトラCになるのだろうか。同じ1面に出ていたコラムは 「物価考」。「『肉ないの』。インドネシアの運送会社に勤めるム スダリファは食事時にこうこぼした。妻は『高いからしょうがない でしょ。タマゴで我慢して』。食卓に欠かせない鶏肉の値段は1年 で50%上がった。通貨安インフレを抑え込もうとインドネシア中 銀は昨年5回にわたり利上げを実施。同国の物価上昇ベースはやや 鈍ったが、景気も冷え込んだ。『食費が足りないから』。ムスダリ フは月に一度の楽しみだった映画館詣でをやめ、海賊版のDVDを 自宅で見る」。これが通貨安とインフレの典型的症状。自国通貨が 売られて繁栄した国はない。しかし、東京の市場関係者の多くは為 替安とインフレを求めているのが現実。原理原則に即せば正しくは ないことが明瞭。数年後の東京でこんな事態が起こらないことを願 うばかり。
日経平均株価は129円安の14994円と反落し1週間ぶりの1 5000円割れ。エムアップ、キッツが上昇。リブセンス、エイチ ームが下落。

11日(水)
注目されたMSCIのカントリーカテゴリ ーの変更。結論は以下の二つ。中国本土に上場している人民元建株 式(中国A株)について、新興国市場指数への組み入れは行わず。 引き続き2015年に検討すると発表した。韓国、台湾の指数につ いては、先進国市場への再分類に向けた見直しリストから除外され る。もしもこれらが見直されたと仮定した試算では中国A株が新興 国市場指数に入ると既存の新興国市場指数組み入れから9000億 円程度の資金流出。韓国・台湾が先進国指数に入ると日本株だけで 3000億円の売り要因だとされていた。 昨年も一昨年も同様のこ とが指摘されたが、見送りだった。今回も見送りどころか韓国・台 湾は見直しリストから除外された。一説では、韓国のサムスンを買 い進んでいた外資系もあるという。むしろ一昨日までの東芝の12 日続伸がこの結果を予測していたのかも知れない。過去2年は見直 し見送りの当日に一部外資系証券が怒涛の買戻しを行っていたのが よみがえる。「SQ週の荒れる水曜日」だったが全く荒れなかった 。先物の当限も9月限も朝の寄り付きに商いしてあとはほとんど鳴 かず飛ばず。拍子抜けするほどの荒れなさだった。5月のSQ週の 水曜日は日経平均424円安。4月は307円安。3月は393円 安。この流れは断ち切られた。日経平均株価は74円高の1506 9円と反発。丸栄、一工薬が上昇。エムアップ、タカタが下落。

12日(木)
時間軸という言葉が結構使われる。例えば 日経平均株価。昨年末と比較すると先進国株価では唯一マイナス。 しかし1年前の昨年6月と比較するとプラス12.59%であり、 風景は変わる。TOPIXは昨年末比マイナス7.96%、昨年6 月比プラス11.59%。因みにNYダウは昨年末比プラス2.23 %、昨年6月比プラス12.06%。NASDAQは昨年末比プラ ス3.86%、昨年6月比プラス26.21%。独DAXは昨年末比 プラス4.99%、昨年6月比プラス21.97%。仏CACは昨年 末比プラス6.96%、昨年6月比プラス20.59%。時間軸を可 変にして辻褄のあう説をつくりあげるのは罫線屋さんの得意技でも ある。裁定取引の買い残は1788億円増加し、3兆534億円。 まだ3兆円と考えたいところ。信用取引の評価損率は3ヶ月ぶりに マイナス9.75%と10%を下回ってきた。松井証券の信用評価 損益率は売り方マイナス0.103%、買い方マイナス6.071 %。空売り比率はまた28.8%と30%台割れ。日経平均HVは 13.8%、日経VIは18.89%。25日移動平均は1457 0円でプラス3.42%かい離。75日移動平均は14594円で プラス3.25%かい離。デットクロスしたのが2月14日バレン タインデーの14300円水準。14800円水準でようやくゴー ルデンクロスしそうになってきた。200日線は14706円でプ ラス2,47%かい離。日経平均株価は95円安の14973円と 反落。山一電機、学情が上昇、エイチーム、エムアップが下落。

13日(金)
日経1面では「法人税、20%台を目指す 」の見出し。骨太の方針が概ね市場関係者の望み通りに固まってき た印象。「株高、追加政策催促的な記事が多い。いろいろ個別論議 が出来るようになって来たことに変化を感じます」と市場関係者。 日経平均株価は124円高の15097円と反発。もっともNYダ ウが2日連続dで100ドル超の下落となったこともあり朝方は売 り先行で一時142円安の14830円まで下落。そこからの戻り は300円近くとなった。SQ値は14807円で決着し、下に「 幻のSQ値」となった。日経平均株価は124円高の15097円 と反発。東証1部の売買代金はメジャーSQの影響もあり2兆63 73億円まで拡大した。カーリット、日新製鋼が上昇。ティアック 、ガリバーが下落。

(2)欧米動向
米投資雑誌「バロンズ」の今週号のコラムは「日本株上昇の第2幕 」。

21世紀の世界において、国際紛争を左右するのは、国家の軍隊の 規模や多くの兵器よりも国家の富なのかも知れない。
増税が阻害要因とならなければ株式市場は再び上昇し得る。日本経 済は必ずしも好調ではないが成長は続いている。日本の2014年 度のGDP成長率見通しは1.7%で昨年の1.6%を下回る、イ ンフレ率を見ても昨年度の0.4%という実質的なデフレ状態から 今年は2.6%。

1兆3000億ドルの運用資産規模を持っている年金資金。リスク 性資産の運用比率を12%→20%に引上げると想定される来年初 に市場は照準をあわせている。EPSが全体で10%増加し、PE Rが13倍の日本株は割安といえる。米国株はEPSが5%増、P ERが16.5倍である。好材料は他にもある、留保していたキャ ッシュを株主還元しようとしていることである。以前はほとんど行 われなかった自社株買いや高配当が当たり前になりつつある。
その上での注目株はソフトバンクとパナソニックとされている。 「ソフトバンクを保有しないリスクは保有するリスクを上回る」と もされる。あるいは「不採算事業から積極的に撤退している唯一の 企業がパナ」とも。こういう論調は危なかった歴史が株式市場。 「持たないリスク」を持ち出されたとたんにガクッとくるものだが ・・・。

明るいかどうか不明なのがアップル分割のアノマリー。アップルは 先日7対1の株式分割を実施した。発行済み株式数は8億6100 万株から60億株に増加した。ダウ採用への道も拡大した印象で「 今年中に採用」との声も聞かれる。一方で同社の分割は4度目。 最初は1987年4月22日。次が2000年4月19日。そして 05年2月11日。それぞれブラックマンデー、ITバブル崩壊、 住宅バブルのピークと象徴的な時期。過去3回は分割後3〜10日 で高値を付けて、その後下落局面を迎えていた。今回は4月23日 の発表から20%以上上昇しての分割。「今度は違う」となって欲 しいところ。

(3)アジア・新興国動向
ブラジルの物価指数やインドの卸売物価などの発表が控えており、 興味の対象は「インフレ」。

【展望】

スケジュールを見てみると・・・。

16日(月)
米鉱工業生産、対米証券投資
17日(火)
首都圏新規マンション販売、FOMC(〜18日)、
消費者物価、住宅着工件数、独ZEW景況感
18日(水)
貿易収支、訪日外国人数、イエレンFRB議長会見、
1〜3月経常収支
19日(木)
米CB景気先行指数、フォラデルフィア連銀景況感、
BBレシオ
20日(金)
コンビニ売上高


2008年1月1日の日経朝刊。

リーマンショックの年の元旦の記事。
トップ見出しは「沈む国と通貨の物語」。
目に付くのは「輸出立国日本は長らく円安は善と信じてきた。成熟 国になった今でも外需依存度は高く、その信仰は強い。だが成長力 低迷と連動する今の円安は国力低下と軌を一にするようにも見える 。希少資源や食糧だけでなく、人材でも買い負けが目立ってきた。 ロンドンを訪れる日本人は、今百年前の夏目漱石と同じ感覚にとら われる。地下鉄初乗り950円、外食代金9300円。円安と日本 のデフレ、低成長がなせるワザだ。YEN漂流」。
6年前の話だが、既に記憶の彼方の話となっている。
しかし・・・。
「デフレでは通貨安指向、インフレでは通貨高指向」というセオリ ーはまだ消えていない筈。このあたりの動向がむしろ今後の市場に どう影を落とすかなのだろう。
加えれば・・・。
ベルリンの壁が崩壊して、日本経済と東京株式市場は低迷期を迎え た。東西冷戦構造で地政学的位置が重要視されなくなったからかも 知れない。しかし、最近の中ロの接近を見ていると、アメリカの地 政学的思考法も元に戻った印象。
ジャパンパッシングからの25年ぶりの脱却方向。となると、15 000円なんて通過点なのだろうが・・・。

クールジャパンが話題になっているがその最先端は訪日観光客の獲 得にあろう。その雇用創出効果は大きくGDPに占める観光業界の 規模は3.5%。
半導体や家電を超えるという試算もあるという。
三菱UFJの試算。鉄道、旅館・ホテル、旅行会社、遊園地などの 経済規模は16.7兆円。輸送用機器(=自動車)の16.6兆円 とほぼ同規模になるというから結構凄い。
因みに電気・電子は14.9兆円。03年から観光関連産業は6% 拡大したという。
そして観光庁の試算。旅行消費で生まれる雇用は400万人近く。 電子・電機が160万人、輸送用機器は110万人だからかなり多 い。
ここを伸ばして「来るシジャパン」が実現できればかなり明るい。
興味深い数字は198000円。ソフトバンクが来年の発売を発表 したロボット「PEPPER」の本体価格である。同時に同社が2 000年2月15日につけた上場来高値も198000円。
何の縁なのだろうか。
まさか「奪還」ではなかろうが・・・。

懇意にしているストラテジスト氏の取材による分析。
「4月の日銀金融政策決定会合での追加金融緩和に期待する向きは 多かった。しかし、外国人投資家などにヒアリングしてみると・・ ・。
意外にも、もし追加の金融緩和策など発表したら日本株は売りとい う声が多かった。その理由は、政府に打つ手がなく、また日銀頼み 。それしか選択肢はないのかという諦念につながるから」。当時は 「外国人投資家も追加金融緩和に期待」なんて声も聞かれた。しか し現実は違っていた。
説得力のある話だった。

6月は欧米の機関投資家の日本株ETFの定期見直しの時期。 アメリカのiシェアーズMSCIジャパンETFやウィズダムツリ ージャパンエクイティ。これらの定期リバラナスは6月20日の予 定で発表は12日頃だとされている。(昨年のリバランスは6月2 4日の大引けで実行された)。
因みに新規採用候補はみずほ(8411)、海上(8766)、N TTデータ(9613)、サントリー(2587)、住友化学(4 005)、パナ(6752)、富士重工(7270)など、一方除 外候補は武田(4502)、アステラス(4503)、キャノン( 7751)、ファナック(6954)、オハラ(5218)、オプ レックス(6914)、トピー(7231)、マニー(7730) などとされている。