7月2週
今週の相場感
(2) 欧米動向
ADPと一緒に雇用レポートの集計をしているムーディーズのエコノミスト氏のコメント。「雇用が現在のペースで拡大すれば、米失業率は毎年0.5%ポイントずつ低下する。 5月に7.6%だった失業率が1年後には7.0%、2015年夏には6.5%まで低下する」。「する」というよりも「させる」という感じだろうか。加えて「FRBが年内に縮小に着手する可能性があることを示している」。週末の雇用統計の事前見通しは16.5万人増。ここまでいかず不即不離での着地が一番というところだろう。踊るのではなく見る方が賢そう。興味深いのはムーディーズとADPの共同作業ということ。所詮経済指標は同じ穴の狢が群れているように映る。 毎月大騒ぎする米雇用統計は市場予想を上回って非農業部門雇用者数は19.5万人増で着地。しかも前月分も前々月分も19万人台に上方修正された。この19万人台という20万人に届かない数字が微妙な機微だろう。明らかな経過回復は金融緩和の早期縮小につながるというコンセンサスに微妙に届かない数字は絶妙なマーケットとの対話に他ならない。

(3)アジア新興国動向
今年も半分を通過。もはや忘却の彼方まがら、日経新聞元旦の見出しは「世界の5割経済圏、アジアに跳ぶ。沸き起こる中間層、日本ネジ巻き直そう」。年前半は活力の感じられなかったアジア。年後半には巻き返しに入ってくるのかどうかが課題となる。堅調な北米、依然軟調な欧州とのハザマでのアジア。何かと話題にはなってきそうな気配。

【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
8日(月)国際収支、景気ウォチャー調査
9日(火)マネーストック、米消費者信用残高
10日(水)日銀金融政策決定会合、国内企業物価指数、米卸売在庫
11日(木)機械受注
12日(金)SQ、米PPI、ミシガン大学消費者信頼感指数

明るかったのは、税収の1.3兆円の上振れ。 法人税の予想以上の増加が背景。 解釈は「アベノミクスの年度末にかけての円安・株高で企業収益が改善」。 加えて官房長官は「消費税を上げて税収が減るようなら何のためにやるかわからない」。

カードはまた温存というところか。 さらに明るかったのは「公的年金、運用益11兆円」。 運用利回りは10.23%と過去最高となった。 しかも政府与党内には、一段の株式比率の引き上げを求める声が聞こえるという。 官房長官はやはり「アベノミクスによる円安・株高が年金財政に大いに役立った」。 だから年金は未払い問題以上に運用問題ということがようやく浮き彫りになった。

アノマリーの変化とともに潮目も変わってきた印象。 その先取りがバイオベンチャー関連の戻りの状態でもあろうか。 参院選挙は告示。 21日に向けて永田町が求めるのはとにもかくにも票そのもの。 それ以降のアベノミクスの進展は、当然ながら改革を伴うもの。 さきがけが昨日の亀田製菓の値動きでもあろうか。 となると、混合診療の進展や農業の規制緩和、国家戦略特区新設、クールジャパンなどなどが目白押し。 カジノ解禁さえも視野に入ってくる。 その先にあるのはそれこそ多様化したグローバル。 マーケットのビッグバンは97年に橋本内閣が推進した。 「フリー・フェア・グローバル」。 何度も言っているは、これは決してフリーではなく、しかもフェアでもなく、弱体化した形でのグローバルだった。 小泉内閣の時には構造改革という旗印が叫ばれた。 結果は失業者の増大だったような印象。 そうではなく、本当に規制を緩和し構造改革ができるのかどうか。 そして海外が求める構造改革とは何なのか。 官僚の保身と自己満足を推進する形では過去の二の舞になるという懸念が残る。 裁判官制度だって無作為での抽出。 いっそのこそ諮問委員会なども官僚・学者ではなく無作為抽出での選出にした方が良い結果になるかも知れない。 「御用」は官僚や学者だけのものではない筈。

気をつけておかなければならないのがマネタリーベース。 6月末残高は173兆円で4ヶ月連続での過去最高を更新している。 月中平均残高も前年比36%増の163兆円。 こちらも4ヶ月連続での過去最高を更新。 紙幣は82兆円、貨幣は4.5兆円。 黒田バズーカ砲というか、アベノミクスの原点の一つはたぶんこのマネタリーベースにある。 人に言われたり否応なくではなく自主的に伸ばしているという点。 以前は、お金を出しても回らずに効果が疑問視されていた。 だからこその投資減税ということなのだろう。 ただ、それ以前の問題として・・・。 2006年にこのマネタリーベースを100兆円以下にまで絞ったことがリーマンショックの前哨戦でもあった。 明らかに金融政策の間違いだったともいえる。 しばしば間違える経済学者が景気判断を間違えた意味も大きい。 それ以上に世界経済が疲弊し始めた時点でのマネー供給の引き締めの影響はもっと大きい。 だからこそ、今はむしろ安堵感というところだろうか。 過剰流動性を過剰に警戒感する愚は繰り返して欲しくないもの。

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