《マーケットストラテジーメモ》10月3週
【推移】
15日(月):
週末のNY株式市場は反発。NYダウは一時400ドル超の上昇。NASDAQの上昇幅は100ポイントを超え、前日まで6日続落していたS&P500も1%超の上昇となった。背景は第3四半期の決算シーズンを控えての買い戻しとの見方だ。
もっともMSCI世界株価指数は週間で4.4%下落し3月以来の大幅安。ミシガン大消費者信頼感指数(速報値)は99.0に低下し、節目の100を割り込んだ。5年先の期待インフレ率は2.3%と、9月の2.5%から鈍化。10年国債利回りは3.14%台に小幅上昇(価格は下落)。
日経平均株価は423円安の22271円と大幅反落。8月27日以来の安値水準に沈んでのほぼ安値引け。ムニューシン米財務長官が日本との貿易協議で通貨安誘導を封じる為替条項を求める考えを示したことなどを手掛かりにした売りが中心となった。
後場一段安の展開で25日線からは5%のマイナスかい離、200日線は割れ込み、SQ値22313円も下回った。双日、武田、ネオス、ワコムが上昇。ソフトバンク、ファーストリテ 、任天堂が下落。
16日(火):
週明けのNY株式市場でNYダウは終値ベースで89ドル安の25250ドルと反落。「中国の消費鈍化がアップル製品の需要低迷につながりかねない」というGSのレポートを嫌気しアップルがNYダウを32ドル押し下げた。ネットフリックスやアマゾンなど主力ハイテク銘柄の下げが目立った格好。サウジアラビア政府による著名記者の殺害疑惑で、米国とサウジの関係が悪化するとの懸念も投資家心理を悪化させた。
2018年会計年度(17年10月〜18年9月)の米財政赤字は7789億ドル。前年度比17%(1131億ドル)増加。赤字拡大は3年連続で6年ぶりの大きさ。GDP比率は3.5%から3.9%に上昇したとの見方だ。
日経平均株価は277円高の22549円と反発。高値引けとなった。前日までの半月間で日経平均は1800円あまり下落しており、短期的な戻りを狙った個人投資家の買いが優勢との解釈。日経平均は2日ぶりに200日移動平均を上回った。ファーストリとソフトバンク2銘柄で日経平均を約110円押し上げた。NTT都市がストップ高。テルモとリクルート、キーエンスが下落。
17日(水):
NY株式市場は大幅反発で主要株価3指数が軒並み2%超の急伸。3指数の上昇率はいずれも1日としては3月以来の大きさ。小型株中心のラッセル2000も約2年ぶりの大幅な上昇率となった。ゴールドマン・サックスやユナイテッドヘルス・グループなどの主要企業の決算を好感。
9月の鉱工業生産指数が0.3%上昇し4カ月連続での上昇。8月の求人件数(季節調整済み)は713.6万件で2000年の統計開始以来の最高水準を更新。好決算と堅調な経済指標が背景との解釈だ。「株は下げなきゃ上がれない」が現実化したと考えるべきだろう。「材料は後から付いて来る」だ。
日経平均株価は291円高の22841円と続伸。NY株式相場が大きく上昇したことで市場心理が改善。買い物優勢の展開となった。日経平均は前場に上昇幅を一時400円超に広げた場面もあったが午後はじりじりと上昇幅を縮小。
東証1部の売買代金は2兆5140億円。テルモ、ソニーが上昇。スズキ、川船が下落。
18日(木):
NY株式市場は小幅反落。大幅高の翌日の反動という格好だ。FOMC議事要旨は「当局者が金利は今後も上昇することでおおむね一致した」との観測。金利上昇懸念がやや強まった。議事要旨の発表後、S&P500はプラス圏とマイナス圏の往来だったから解釈も割れたということだろう。
9月の住宅着工件数が年率換算で前月比5.3%減の120.1万戸と予想の122万戸を下回ったことも悪材料視された。財務省は半期に一度の外国為替報告書を発表。ただ中国やその他の貿易パートナーを為替操作国に認定するのは見送り。中国、インド、日本、ドイツ、韓国、スイスを監視対象に引き続き指定した。
日経平均株価は182円安の22658円と3日ぶりの反落。上海総合株価指数が約4年ぶりの水準まで下落。リスク回避の売りが優勢となった。日銀のさくらリポートが一部地域の景気判断を引き下げたことも悪材料視された。三菱UFJ、KDDIが上昇。国際帝石、資生堂が下落。
19日(金):
NY株式は1%超の大幅に下落。FOMC議事要旨がタカ派的だったことを背景に売り物優勢となった。FRBの最新の経済見通しではFRBは12月に追加利上げを実施。来年は数回の利上げを実施した後は、2020年のある時点で金利は3.40%近辺に達するとの見通し。欧州委員会がイタリアに対し、2019年予算案がEU財政規律から大幅に逸脱しているとの見解を通達したことも悪材料視。ムニューシン米財務長官はサウジアラビアで来週開催される経済投資フォーラム「砂漠のダボス会議」への参加を取りやめる意向を表明。
ポンペオ米国務長官はサウジアラビアが同国の記者失踪に関する調査を完了できるよう、米国はサウジにあと数日の時間を与えるべきとの考えをトランプ大統領に提言。サウジ問題もまた浮上してきた。
日経平均株価は126円安の22532円と続落。中国の景気減速懸念から売り物優勢の展開だった。ただ一時400円以上下落した場面もあったが買い戻しと押し目買いか交錯し下落幅は縮小した。エーザイ、ユニー・ファミマが上昇。ソフトバンク、トヨタが下落。
(2) 欧米動向
「双子の赤字」という懐かしい言葉が登場してきた。
米国の財政赤字と貿易赤字の2つの共存のことだ。
17年のモノの貿易赤字は1962億ドルと9年ぶりの悪化水準。
18年の財政赤字は減税の影響もあり1兆ドル超の赤字見通し。
「双子の赤字は米経済のバランスが欠けていることを示している。
市場にゆがみをもたらす」は教科書的解釈。
1980年代のレーガン政権時代に起こった「双子の赤字」。
もたらしたのは85年の「プラザ合意」での円高。
それに伴うカネあまりでのバブル。
うなだれた米国と胸を張る日本という構図が甦って来る気がしてならない。
1950年以降、NYダウの11月から翌年4月までの平均上昇率は7%超。
4月から10月までの上昇率は0.5%未満というのが歴史。
バイロンウォーン氏は下落の最中に「今回の動きは強気相場の調整。
年末にS&P500は3000ポイントに向かおう」とコメントしていた。
GSは「S&P500の強いファンダメンタルズは、市場の売りが限定的であることを示している。
S&Pの調整は通常5%程度。
1928年以降、71営業日に1回は5%下落の調整があった。
10月11日時点で5%下落していたが既に69日経過していた。
日柄と値幅を考えればそれ以上の下落の可能性は低かった」。
とはいえS&P500の年末予想の1850ポイントというのはショボイが・・・。
(3)アジア・新興国動向
「中国製造2025」の重点10分野
(1)次世代情報技術:
国家情報やサイバー空間の安全にかかわる半導体チップの国産化強化。
(2)高度なデジタル制御の工作機械・ロボット:産業用、医療、家庭向けロボットなどの新製品を需要に応じて開発。
(3)航空・宇宙設備:大型航空機の開発、有人宇宙飛行、月面探査事業を推進
(4)海洋エンジニアリング・ハイテク船舶:深海探査向けの主要システム開発
(5)最先端鉄道設備:世界トップレベルの鉄道交通産業の体型を構築。
(6)省エネ・新エネ自動車:電気自動車、燃料電池車の開発を支援。
自主ブランド世界トップレベルへ。
(7)電力設備:水力や原子力発電、重量型ガスタービンの生産能力を向上。
新エネを推進。
(8)農業用機材:食糧、綿、油、砂糖など戦略的経済作物の生産に
農業機器を重点的に開発。
(9)新素材:超電導素材、ナノ素材、グラフェンなど戦略的な先端素材の開発を加速。
(10)バイオ医薬・高機能医療機械
バイオ3Dプリンターなど新技術の飛躍と応用を実現。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
22日(月):全産業活動指数、米シカゴ連銀全米活動指数
23日(火):長銀破綻から20年、米2年国債入札
24日(水):臨時国会招集、米新築住宅販売、ベージュブック
25日(木):安倍首相訪中、米耐久財受注、中古住宅販売、ECB定例理事会、独IFO景況感
26日(金):米7〜9月期GDP
【10月】
18日(木)EU首脳会議(ブリュッセル〜19日)
21日(月)ストボフォーラム2018名古屋
23日(火)変化日、明治改元から150年
24日(水)米ベージュブック
25日(木)ECB理事会
27日(土)プロ野球日本シリーズ開幕
28日(日)欧州サマータイム終了
29日(月)変化日
30日(火)日銀金融政策決定会合(〜31日)、株高の日
2月2日〜5日の2日でNYダウは約7%下落。
2月5日までの5日間でNYダウは約9%の下落。
今回は10月4日からの5日間の下落は4,6%、
「株安のマグニチュードは半分程度の規模」というのが大手証券のレポート。
「FOMC開催までまだまただ時間があるときに下げ相場になる確率が高い。
金融当局とけんかしても勝てない」という仮説。
今年の突っ込んだ日は全て「米FOMCが終わった後。
もしくは、FOMC開催までまだまただ時間があるとき」。
(兜町カタリスト 櫻井英明)
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