《マーケットストラテジーメモ》7月1週
【推移】
1日(月):
週末のNY株式は上昇。G20での米中首脳会談への期待感が高まり活況商い。3市場の売買高は102億株(過去20日間平均は71億株)と急増した。週間ベースではNYダウは0.4%安、NASDAQは0.3%安、S&P500は0.3安。それぞれ4週ぶりの反落。
月間ベースではNYダウは7.2%高、NASDQQは7.4%高、S&P500は6.9%高。それぞれ2カ月ぶりの反発。主要株価3指数は週間、月間、四半期、上期ベースすべてでプラス。特に6月としてはS&P500が1955年以来の好成績。NYダウの6月の上昇幅は1784ドルとなり月間として1938年以来過去最大だった。「パウエルFRB議長が政策運営姿勢を前回の利上げから180度展転換したことが上期の株価動向の追い風」という見方だ。
日経平均株価は454円高の21729円と大幅反発。今年最大の上昇幅は2月12日の531円高だが令和に入っては最大の上昇幅となった。5月7日以来、約2カ月ぶりの高値。米中首脳会談で貿易協議の再開と追加の対中制裁関税の先送りで合意したことを好感。太陽誘電が上昇。東レ、千代建が下落。
2日(火):
週明けの1日のNY株式市場は続伸。NYダウは117ドル高の26717ドル。NASDAQは4日続伸。84ポイント高の8091ポイントと5月上旬以来の水準を回復。S&P500は3日続伸。22ポイント高の2964ポイントと過去最高値を更新した。
米中貿易協議が再開。米政府による追加関税「第4弾」の発動見送りやファーウェイへの汎用品の輸出を認める方針を示したことを好感。
ISM製造業景況感指数は市場予想の51.0に対し51.7で着地。市場予想を上回ったものの3カ月連続で低下。2016年10月以来の低水準となった。
日経平均株価は24円高の21754円と小幅続伸。売買交錯で目先の利益確定売りに押されながらもプラスを確保した。日中値幅は86円で3月7日以来の小ささ。フィルム、日立が上昇。大日住友、資生堂が下落。
3日(水):
NY株式市場は小動きでの続伸。USTRがEUに対する追加関税の対象規模拡大を検討していると発表したことが警戒されたがプラス圏。「世界的に経済指標が軟調となる兆しが出る中、市場の関心は各国中銀の金融政策、および企業決算に再びシフトする」という都合の良い解釈だ。原油安を受けてエネルギーセクターは軟調。
イングランド銀行のカーニー総裁が「景気減速に対応するために若干の支援が必要になる」とコメント。英中銀が年末までに利下げを実施するとの観測が高まった。英国10年国債利回りは2年半ぶりの水準に低下。つれて米10年国債利回りも2%を割れて推移。
日経平均株価は116円安の21638円と3日ぶりの反落。米金利低下を嫌気した円高への嫌気から売り物優勢の展開。ファーストリテ、ダイキンが上昇。ファナック、トヨタが下落
4日(木):
NY市場は独立記念日の祝日を控えた短縮取引。主要指数はそれぞれ終値での過去最高値を更新した。ADPの全米雇用レポートで民間部門雇用者数は10.2万人増。市場予想の14万人増を下回った。週間新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比8000件減の22.1万件。市場予想の22.3万件を下回って着地。ISM非製造業総合指数は55.1と前月の56.9から低下。市場予想の55.9を下回り2017年7月以来約2年ぶりの低水準に並んだ。
5月の貿易赤字は前月比8.4%増の555億ドルと5カ月ぶりの高水準。5月の製造業新規受注は2カ月連続でマイナスとなり製造業が弱含み続けたことを示した。「第2四半期に経済成長が急激に鈍化したことを改めてうかがわせた」との解釈だ。
短縮取引だったことから3市場の売買高は約41.5万株と縮小。
日経平均株価は64円高の21702円と小幅反発。上昇幅は一時100円を超えた場面もあった。川船、SBGが上昇。ファーストリテ、BSが下落。東証1部の売買代金は1兆4548億円。6月24日に記録した1兆4115億円に次ぐ低水準。
5日(金):
NY市場は独立記念日で休場。STOXX欧州600は小動きながら6日続伸。欧州株式市場は1年強ぶりの高値水準を回復。ドイツ10年国債利回りはマイナス0.4%を一時下回った。
日経平均株価は43円高の21746円と続伸。上海株の上昇が追い風となった。終盤に上昇幅を拡大し高値引け。景気動向指数の基調判断が「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されたことも好感された。「投資家の先行き警戒感が相当程度和らいだ」という声が聞こえる。52週移動平均線(21727円)を回復。週間では470円の上昇で週足は5週連続陽線。東エレ、ファナックが上昇。SBG、ダイキンが下落。
(2) 欧米動向
NYダウは2018年10月3日以来の過去最高値を9カ月ぶりに更新した。
NASDAQは5月3日以来2カ月ぶりに過去最高値を更新。
S&P500は連日の過去最高値更新。
「景気鈍化の兆しが経済指標によって新たに示されFRBがよりハト派に傾く」との見方。
つまり金利低下への道のりが固まったという解釈での株高だ。
辻褄があっているようで非合理的な解釈ではある。
(3)アジア・新興国動向
中国国家統計局が発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4。
前月と同水準だった。
景況拡大と悪化の分かれ目となる50を引き続き割り込み市場予想の49.5も小幅下回った。
「弱い製造業指数は、米中貿易交渉の今後に影を落とすことになる。
中国政府は景気刺激策の拡大を迫られる可能性がある」との見方だ。
弱い製造業指数は、米中貿易交渉の今後に影を落とすことになる。
非製造業PMIは、前月の54.3から54.2に低下。
製造業とサービス業を合わせた総合PMIは53.0と前月の53.3から低下した。
手放しで「米中首脳会談」を喜べない状況も理解できようか。
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち23指数が上昇。
上位1位イタリア週間騰落率3.54%、2位トルコ3.26%、3位ブラジル3.09%、
4位ベトナム2.67%、5位日本2.21%、12位米国1.21%。
下位25位南アフリカ▲1.26%、24位韓国▲0.94%、23位タイ0.05%、
22位インドネシア0.23%、21位インド0.30%、20位台湾0.51%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
8日(月):機械受注、国際収支、景気ウォッチャー調査、米消費者信用残高
9日(火):マネーストック、工作機械受注
10日(水):国内企業物価指数、中国消費者・生産者物価
11日(木) :都心オフィス空室率、第3次産業活動指数、はやぶさ2がリュウグウへ2回目の着陸、米消費者物価、財政収支
12日(金):オプションSQ、米生産者物価、中国貿易収支、AIIB年次総会
一方で日銀短観。
大企業製造業DIはプラス7で前月比▲5ポイント。
市場予想は▲9ポイントのプラス9ポイントだった。
大企業設備投資額は△12.9%と△2.5%増。
想定為替レートは109円35銭。
先週1週間は「米中首脳会談での様子見」との解釈ばかりが聞こえた。
米中首脳会談は実現し、通商協議再開で着地。
しかも米朝首脳会談のサプライズまでおまけで付いてきた。
結局、幾何級数的に可変な市場展開を単一の材料で解釈しようという姿勢に間違いがあることは多い。
一つの材料で市場展開を解釈しようとするのは、怠慢であり、傲慢であり、冒とくでもあろう。
上がってくると更に上を欲しがるのも投資心理。
あるいは市場心理。
「7月はダメ。8月は暴落」という声はギャフンとなる可能性が高いと見たい。
(兜町カタリスト 櫻井英明)