《マーケットストラテジーメモ》8月第3週
15日(月):
週末のNY株式市場で主要3指数は揃って上昇。「インフレが7月にピークを付けた可能性」を再び好感したとの解釈。主要11セクター全てが上昇。フィラデルフィア半導体指数(SOX)や小型株指数、輸送株指数も上昇。グロース株は2.1%、バリュー株は1.4%上昇。BofAの週間調査では週間で株式ファンドに71億ドルが流入した。
S&P500とNASDAQ総合は昨年11月以来の4週続伸。S&P500は6月中旬の安値から17.7%上昇。1月に付けた最高値から6月中旬に付けた安値までの下げ幅の半値戻し水準の4231ポイントを回復。「第二次世界大戦以降、S&P500は半値戻しの達成後、以前の安値を再び試すことはあっても、安値を更新することはなかった」と言う声が聞こえる。
日経平均株価は324円高の28871円と続伸。約7ヶ月半ぶりの高値水準を回復した。東証プライム市場の売買代金は2兆5601億円。東エレ、SBGが上昇。リクルート、川船が下落。
16日(火):
週明けのNY株式市場で主要3指数は揃って続伸。NYダウは4日続伸となったが一時下落に転じた場面もあった。中国の7月の工業生産高や小売売上高などの主要経済指標が市場予想を下回って着地。「中国景気への警戒感が高まった。NY連銀製造業景況指数が大幅に低下したのも投資家心理の重荷となった」との解釈。「FRBが米経済をソフトランディングさせられるとの見方を背景に買い継続。大型グロース株が上昇した」との見方だ。
日経平均株価は2円安の28868円と小幅続落。東証プライム市場の売買代金は2兆5406億円。バンナム、トレンドが上昇。出光興産、川船が下落。8月SQ値285252円を上回って3勝。その先の高値の節目は1月5日の29332円。昨年大納会終値28791円は上抜いた。
17日(水):
火曜のNY株式市場で主要3指数はマチマチ。NYダウとS&P500は続伸。NASDAQは反落。通期利益見通しを上方修正したウォルマートが5.1%高。第2四半期決算で売上高が市場予想を上回ったホーム・デポが4.1%高。S&P500指数採用企業の第2四半期利益決算は前年同期比9.7%増の見通し。7月の鉱工業生産指数は製造業が前月から0.7%上昇。上昇率は市場予想の0.2%を上回った。恐怖と欲望指数は54→57。「欲望」のエリアに入ってきた。
日経平均株価は353円高の2万9222円と反発。29000円の節目を上回るのは1月5日以来およそ7カ月ぶり。東証プライム市場の売買高は2兆8671億円。
日経平均は心理的な節目の水準を超えたことから、売り方の買い戻しが入ったと見方だ。TOPIXは反発。節目の2000ポイントを7カ月ぶりに上回った。ファストリ、ソニーGが上昇。トレンド、第一三共が下落。空売り比率は39.6%(前日40.6%。3月24日から92日ぶりに40%割れ)。
18日(木):
水曜のNY株式市場で主要3指数は揃って下落。「FOMC議事要旨を受けFRBが9月の利上げ時に想定されていたほど積極的にならないとの見方が拡大。指数は不安定な動きとなった」という珍妙な解釈。午後にFOMC議事要旨が発表されると主要株価指数は下落幅を縮小。NYダウは一時プラスに転じた場面もあった。第2四半期決算は予想を超える90%の減益となったターゲットが2.7%安。この軟調な決算が悪材料視された。
日経平均株価は280円安の28942円と反落。29000円を割り込んだ。TOPIXも2000ポイント割れ。東証プライム市場の売買代金は2兆3080億円。バンナム、丸井が上昇。ファーストリテ、テルモが下落。
19日(金):
木曜のNY株式市場で主要3指数は揃って小幅反発。シスコシステムズが前日に発表した業績見通しを好感。ハイテク株が上昇をけん引した格好。米半導体装置メーカー、アプライド・マテリアルズの第4四半期の売上高が66億5000万ドルプラスマイナス4億ドルになるとの見通し。7月の米中古住宅販売戸数(季節調整済み)は年率換算で前月比5.9%減の481万戸。2020年以来約2年ぶりの低水準となった。パンデミックの期間を除くと15年11月以来の低水準。
日経平均株価は11円安の28930円と小幅反落。朝方は上昇幅か200円を超えた場面があったが、年初来高値を前に警戒する動きとなった。東証プライム市場の売買代金は2兆3963億円。京セラ、ソニーが上昇。リクルート、トレンドが下落。
(2) 欧米動向
記録的な熱波に見舞われている欧州。
物流の大動脈であるライン川の水位が一段と低下。
一部の船舶が航行できなくなっているという。
ライン川の物流は完全にストップしていないものの水位の低下で通常の4分の1しか貨物を積載できない。
荷主は4倍の輸送量を支払う必要に迫られているという。
コブレンツに近いカウプにあるチェックポイントで12日のライン川の水位は42センチと前日から約5センチ低下。
8日時点では51センチだった。
貨物を完全に積載した船舶がカウプ付近を航行するには約1.5メートルの水位が必要とされる。
(3)新興国動向
中国銀行保険監督管理委員会(銀保監会)は不動産開発会社に対する慎重な金融管理制度の導入を進め、不動産開発会社の合理的な資金需要に効果的に対応することを目指すと明らかにした。
中国では不動産開発業者で債務不履行が相次ぎ、住宅販売が低迷。
経済のさらなる混乱が懸念されている。
このため中国の政策当局は、経済の4分の1を占める不動産部門の安定化を図ろうとしている。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
【8月】5勝5敗、(勝率50%、10位)
気学では「戻り売り方針一貫のとき。新安値は買い。下旬より上昇傾向」。
8月22日(月)首都圏マンション販売、大幅高の特異日
8月23日(火)米新築住宅販売、 天赦日
8月24日(水)米耐久財受注、中古住宅販売仮契約
8月25日(木)企業向けサービス価格指数、米カンザスシティ連銀金融シンポジウム(ジャクソンホール27日)、独IFO景況感
8月26日(金)東京都区部消費者物価、米個人所得・支出 変化日
8月27日(土)アフリカ開発会議(→28日、チュニジア)
8月29日(月)株高の日L
8月30日(火)失業率、米CB消費者信頼感、FHFA住宅価格、CS住宅価格、JOLT求人件数、JPX400・JPX中小型定期銘柄入れ替え実施
8月31日(水)鉱工業生産、消費動向調査、中国製造業非製造業PMI、MSCI日本株指数パッシブ売買インパクト
9月 1日(木)法人企業統計、米ISM製造業景況感、中国財新製造業PMI
9月 2日(金)マネタリーベース、米雇用統計、製造業受注
6月の対米証券投資(TIC)統計で日本の米国債保有額が2カ月連続で増加。
前月比126億ドル増の1兆2362億ドル。
中国は7カ月連続で減少。
同130億ドル減の9677億ドルだった。
今回のTIC統計に関して、JPモルガンのりポート。
民間部門は651億ドルの米国債を買い越し。
たが、公的部門は62億ドルの売り越し。
5カ月連続の売り越しとなった。
地域別に見ると英国経由の買い越しが353億ドルとけん引役。
一方、5月に米国債を大量に買い越したケイマン諸島が51億ドルの売り越し。
ヘッジファンドによる米国債のショートカバーが一巡したことを示すとの観測。
「海外勢による米国債需要は今年の残りは抑制されるとみられ、特に中期セクターで弱気スタンスを維持すべきと考えている」。
BofAセキュリティーズの顧客フローのリポート、
同社の顧客は8ー12日の1週間に米株を33億8800万ドル買い越し。
7週連続の買い越し。
主体別動向ではヘッジファンド(HF)が8400万ドルの買い越し。
2週ぶりの買い越し。
機関投資家は12億3600万ドルの買い越し。
3週連続の買い越し。
個人投資家は5億3500万ドルの売り越し。
7週ぶりの売り越し。
企業の自社株買いは25億5200万ドルで4週移動平均(14億3000万ドル)を上回った。
個別・上場投資信託(ETF)共に買い越。
買いは大型株が中心だった。
なお米国で23年から自社株買いに1%の課税が課される場合22年に自社株買いが前倒しで行われる可能性があるとの見通し。
年初来のS&P500採用銘柄の自社株買いは21年の規模を上回っている。
しかし新型コロナウイルスの感染拡大前の2019年の同時期の水準は下回っているという。
(兜町カタリスト 櫻井英明)