《マーケットストラテジーメモ》 6月第3週
【推移】
17日(月):
週末のNY株式は反落。ハイテク株の多いNASDAQの下げが大きかった。SOX指数は▲2.61%。「中東のきな臭い状況や香港の動揺を見ながらも、堅調な相場ともいえる」という見方もある。3市場の売買高は58.5億株と過去20日平均の68.3億株を下回って低調。週間ではNYダウは0.6%、NASDAQは0.7%、S&P500は0.5%の上昇。ともに2週続伸。S&P500が2%、NYダウがあと3%、NASDAQでもあと5%で最高値という水準まで戻った米国株だ。
日経平均株価は7円高の21124円と続伸。TOPIXは反落。FOMCやG20首脳会議を控えており様子見ムード。ソニー、楽天、ユーグレナが上昇。ヤマダ電、キーエンス、日本通信が下落。6ー8月の権利配当を考慮すると現物先物の逆ザヤは40−50円程度だろうか。
18日(火):
週明けのNYダウは小幅反発。一時70ドルあまり上昇した場面もあったが終値は22ドル高の26112ドル。5月6日以来の高値水準を回復した。今回のFOMCでは利下げを見送りの方向。景気の不透明感から7月か9月の会合で利下げに動くとの予想が拡大している。NY連銀製造業景況指数は前月比26.4ポイント低下のマイナス8.6。2016年10月以来の低水準で下げ幅としては過去最大。市場予想のプラス10.5を大幅に下回った。景況感悪化―利下げー株高という本末転倒の構図がクローズアップされた格好だ。
日経平均株価は151円安の20972円と3日ぶりの反落。後場は一時200円超の下落場面もあった。TOPIXは続落。資生堂、塩野義が上昇。SBG、ファーストリテが下落。
19日(水):
NY株式市場は大幅高。主要3指数は過去最高値に迫る展開。トランプ大統領が中国の習近平国家主席と電話会談。「米中首脳会談を今月末に大阪で開催されるG20首脳会議合わせて実施する」とコメント。
首脳会談に先立ち両国は通商問題を巡る事前協議を開始するという。これを好感してセンチメントが改善。
ハイテクセクターが買われフィラデルフィア半導体指数(SOX)は4%超の上昇となった。ECBのドラギ総裁は「物価の伸びが低迷し目標を達成できない状況が続いた場合、ECBは利下げや資産買い入れなどの金融緩和を再度行う」とコメント。物価押し上げへの決意表明となった。
ドイツ国債利回りは過去最低に低下。フランス10年債利回りは初めてマイナス圏に突入した。米10年国債利回りは一時2.016%まで低下した。
日経平均株価は361円高の21333円と反発。5月10日以来約1ヶ月ぶりの高値水準を回復した。東証一部の売買代金は2兆368億円。SBG、ファーストリテが上昇。スシロー、富士通が下落。
20日(木):
NY株式市場で主要3指数は続伸。NYダウとS&P500は4月下旬に付けた終値ベースの過去最高値にあと1%弱の水準となった。FOMCは通過。FF金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを決定。また不確実性の増大などに対応するために年内に最大0.5%ポイントの利下げを実施する可能性も示唆した。
FOMC声明は「景気拡大を維持するために適切に行動する」。従来の「金利調整に当たり忍耐強く対処する」は削除された。「通商問題などで大きなニュースが出てこない限り、FRBは7月の次回FOMCで利下げに動く」という見方だ。ただ「FOMC声明は7月の利下げを示唆するほどの内容でなく、9月までずれ込む可能性もある」という指摘もある。
日経平均株価は128円高の21462円と続伸。令和初の木曜高となった。米国の早期利下げ観測を受けたNY株高を好感。上海株の上昇も追い風となった。日銀金融政策決定会合は現状維持で通過。東証一部の売買代金は1兆7927億円と低調。ファーストリテ、川崎船が上昇。トヨタ、キーエンスが下落。
21日(金):
NY株式市場で主要3指数はそろって4日続伸。株高、債券高、商品高と世界的金利低下傾向を好感した格好での上昇となった。S&P500は過去最高値更新。6月の上昇率は7%だ。FRBの利下げ観測や来週のG20首脳会議に合わせて行われる米中通商協議への期待感継続という解釈。アップルは0.8%高で一時5月初旬以来となる200ドルの大台に乗せる場面もあった。
10年国債利回りは一時1.974%まで低下。2016年11月以来の低水準を付けた。ということはトランプ大統領当選時の水準に戻ったということになる。
日経平均株価は204円安の21258円と反落。NY株は続伸したもののドル円の107円台を警戒しての売り物優勢。米国のイラン攻撃に対する警戒感も悪材料視された。東証一部の売買代金は2兆7182億円。ただFTSEの構成銘柄入れ替えの商いの比重が多く実質は薄商い。東エレ、信越が上昇。ファーストリテ、SBGが下落。
(2) 欧米動向
NYダウの過去最高値は26951ドル。
NASDAQは同8176ポイント。
S&P500は同2954ポイント。
バンクオブアメリカ・メリルリンチの6月の機関投資家調査(7〜13日実施)。
現金や米国債の保有を増やす一方、株式保有を減らす投資家が多かった。
保有資産に占める現金の比率は5.6%と前月から1ポイント上昇。
米連邦債務問題が深刻化した2011年8月以来、7年10カ月ぶりの上昇幅となった。
世界の株式保有について、当初設けた配分を上回る「オーバーウエート」にしていると答えた投資家の比率から、
当初配分を下回る「アンダーウエート」にしていると答えた投資家の比率を引いた値はマイナス21%前月から32ポイント下がり09年3月以来の低水準だった。
(3)アジア・新興国動向
ここまでの米中交渉を振り返ると、関税の引き上げや中国の通信機器大手ファーウェイへの禁輸措置などで5月までは米国優位。
中国がレアアースの輸出規制をちらつかせたあたりから攻守交代の印象。
中国は貿易摩擦の長期化も辞さない構え。
来年に大統領選挙という締切を抱えたトランプ大統領が絶対に勝てないのがこの部分だ。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
24日(月):米シカゴ連銀全米活動指数、独IFO景況感
25日(火):企業サービス価格指数、米CB消費者信頼感、新築住宅販売、CS住宅価格指数
26日(水):通常国会会期末、米耐久財受注、民主党大統領候補TV討論会、天赦日
27日(木) :株主総会集中日、米GDP確定値、中古住宅販売仮契約
28日(金):失業率、有効求人倍率、鉱工業生産、G20大阪サミット、日米、米中首脳会談の可能性、米個人所得、大幅高の特異日、鬼宿日
例年、季節的な資金の流れによる株式需給の好転を背景に、6月中旬以降の株価は上昇する傾向。
過去去10年の平均をみると、4月末〜5月にかけて高値をつけている。
実際に今年の日経平均は4月25日に終値ベースの高値を付けた。
ココまでは季節性通りの展開。
今後も季節的な動きの再現が期待される。
配当支払いは6月17日から2週間で約4.8兆円。
支払いが多い日は19日、24日、26日、最大が28日で約1.5兆円。
因みに・・・。
「6月は中小型株の株価が上昇しやすい時期」という指摘もある。
過去20年間で6月最終営業日の「ジャスダック指数」は9割超の確率で上昇。
通過してから「そういえば」と気がつくのがアノマリーでもある。
その先の7月に登場してくるのがETFだ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)