《マーケットストラテジーメモ》6月1週
【推移】
1日(月):
週末のNY株式市場はマチマチの動き。NYダウは17ドル安だったがNASDAQは120ポイント高。トランプ大統領は中国に関する発表で「米中の第1段階通商合意」を損なうような発言を控えたことが安心感につながったとの解釈。ただ「一段と厳しい罰則や制裁措置が打ち出されれば、株式市場に対するリスクになる。トランプ大統領は中国に対する反応と通商合意を別々のものとして捉えることができている」と見方だ。主要3指数は週間も月間でも上昇。
日経平均株価は184円高の22062円と反発。終値ベースで2月26日以来の22000円台を回復した。日足は6日連続の陽線で昨年9月17日までの6日連続陽線に並んだ。短期的な過熱感が意識されて上昇幅を縮小し一時22000円を割れこんだ場面もあったが米ダウ先の動きにつれて22000円台に戻した格好。上海、ハンセンの2%超の上昇も好感した。
東証1部の売買代金は2兆3258億円。SBG、楽天が上昇。三菱UFJ、第一三共が下落。マザーズ指数は年初来高値を更新し2018年12月以来の1000ポイント台乗せ。
2日(火):
週明けのNY株式市場で主要3指数はそろって上昇。朝方は売り先行だったがプラス転換。抗議デモや新型コロナウイルス、米中緊張懸念がくすぶってはいるが景気回復の兆候を採用して好感。「大半の投資家はデモが経済を破壊することにはならないとみている。障害だが、新型コロナ流行ほど大きな問題ではない」という見方だ。
一方でトランプ大統領が香港に対する優遇措置を撤廃する方針を示した。
日経平均株価は263円高の22325円と続伸し2月26日以来の水準を回復した。買い戻し中心ながら上昇幅は一時300円を超える場面もあった。
東証一部の売買代金は2兆4090億円。SBG、アサヒが上昇。第一三共、任天堂が下落。日足は昨年4月以来の7日連続陽線。日経ジャスダック平均は13日続伸。マザーズ指数は年初来高値を更新。騰落レシオは150.78(前日136.39)。昨年11月の142%を上抜けた。
17年5月24日の164.6以来3年ぶりの高水準。
3日(水):
火曜のNY株式市場で主要3指数は揃って反発。拡大している抗議デモや新型コロナウイルス流行は見えないフリ。「ロックダウン(都市封鎖)緩和による景気回復期待先行での買い優勢」との解釈だ。「抗議デモが地元経済に及ぼす影響の可能性はさほど注視されていない。ただデモが続けば、新型コロナウイルス流行によるビジネスへの打撃が増幅される恐れがある」。適当な講釈も聞こえてくる。
「テクニカル要因が相場を押し上げた」という難解な見方もある。市場の注目は週末の雇用統計なのだろうが失業率は19.7%に悪化との見通し。
日経平均株価は288円高の22613円と3日続伸。108円台への円安トレンドを背景に強い展開。高値は22818円と500円近くの上昇。3日間で一時1000円近い上昇で上値は重かった。ただ上値は重かった。東証一部の売買代金は2兆7736億円。マツダ、板硝子が上昇。富士通、SBGが下落。空売り比率は35.4%(3日連続40%割れ)。
4日 (木):
水曜のNY株式市場で主要3指数は続伸。NYダウの上昇幅は527ドルで約3ヶ月ぶりに26000ドル台を回復した。NASDAQは一時9700ポイント台に乗せ過去最高値にあと1.4%と迫った。過去最高値までS&P500は7.8%、NYダウは11.1%。経済に対する楽観的な見方がコロナやデモ、対中関係への懸念を押しのけた格好だ。現実逃避で「悪い事実よりも良い希望」という心理なのかも知れない。
ADP全米雇用レポートで民間部門雇用者数は276万人減少。過去最悪だった4月の1955万7000人減からは大分好転。市場予想の900万人ほどの悪化はなかった。ISM非製造業総合指数は45.4と4月に付けた2009年3月以来、約11年ぶりの低水準から改善。「世界が終わるわけではないとの見方が市場で出ている」との声は興味深い。
日経平均株価は81円高の22695円と4日続伸。後場寄り後に100円以上のマイナス場面もあったが切り返した。ECBが金融緩和の強化に動くとの観測も一部で浮上。投資家心理の支えになった。東証1部の売買代金は2兆6913億円。SBG、ソニーが上昇。武田、ファナックが下落。
5日(金):
木曜のNY株式市場で主要3指数はマチマチ。NYダウは小幅高だったがS&P総合500は5日ぶりに反落。NASDAAQも反落。「雇用統計を控えての利益確定売り」との解釈だ。3月半ば以降初めて200万件を下回ったが依然として非常に高い水準。
ECB定例理事会では政策金利を予想通り据え置き。パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券買い入れ規模をほぼ倍増。1兆3500億ユーロとした。「国債利回りが上昇を維持したことは資金が国債から他にシフト始めていること」という指摘がある。ドル円は一時109.16円と4月7日以来の高値水準。恐怖と欲望指数は61→62。
日経平均株価は167高の22863円とほぼ高値引け。日中値幅は300円。日足は2日ぶりの陽線で今年初の5日続伸。週足は3週連続陽線。東証1部の売買代金は2兆4542億円。ホンダ、JALが上昇。テルモ、ZHDが下落。
(2) 欧米動向
ISM製造業景況感指数は43.1で前月から1.6ポイント上昇。
4カ月ぶりの上昇だが、製造業景気の拡大・縮小の境目である50は3カ月連続で割り込んだ。市場予測は44.0だった。
雇用統計で非農業部門雇用者数が前月比250万9000人増と市場予想の800万人減に反してプラスに転じた。
4月は約2070万人減と1930年代の大恐慌以降で最大の落ち込みだった。
失業率は13.3%と戦後最悪だった4月の14.7%から改善。
市場予想は19.8%だった。
「新型コロナウイルス感染拡大抑制策の緩和を受け雇用市場が改善している」との解釈だ。
(3)アジア・新興国動向
中国による香港への国家安全法導入の動きが進み、米中両国の対立が激しさを増す。
自民党内で習氏来日への慎重論も強まり、具体的な日程の調整を当面見合わせる。
インドでは首都ニューデリーなどインド都市部の失業率が5月26%になったもよう。
全土封鎖で経済活動停止し、全国では1億2000万人が職を失った。
インドは都市部で失職した出稼ぎ労働者が農村に帰らざるを得ず、その過程で感染者が広がる構図。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
↓
【6月】陽線確率7勝3敗、(陽線確率70%)、過去15年10勝5敗(1位)
気学では「利を優先するより、損をしないよう売り方針」
8日(月):GDP確定値、景気ウォッチャー調査
9日(火):マネーストック、米FOMC(→10日)、ジョンソンレッドブック指数、株安の日、
10日(水):国内企業物価指数、機械受注、パウエルFRB議長会見、消費者物価、財政収支、中国生産者・消費者物価、変化日
11日(木):景気予測調査、米生産者物価、株高の日
12日(金):メジャーSQ、米輸出入物価、ミシガン大学消費者信頼感
15日(月):日銀金融政策決定会合(→16日)、第3次活動指数、米NY連銀製造業景気指数、対米証券投資、中国各種経済指標
16日(火):黒田日銀総裁会見、米小売売上高、鉱工業生産、ジョンソンレッドブック指数、独ZEW景況感、変化日、株安の日
17日(水):貿易統計、首都圏マンション販売、国会会期末、米住宅着工件数
18日(木):東京都知事選告示、首都圏マンション販売、米CB景気先行指数、フィラデルフィア連銀景況観、
19日(金):消費者物価、米経常収支
20日(土):天赦日+一粒万倍日
21日(日):部分日食、上げの特異日
興味深いのは海外投資家の動向。
5月最終週の対内投資では880億円の売り越し。
投資部門別動向では216億円の売り越しだった。
ただ現物と先物の合計は4058億円の買い越し。
約4か月ぶりの大きさだ。
日経朝刊の指摘は「買い戻しと先高期待」。
年初来高値更新を夢見る外国人もいるという。
一方で「世界景気回復の確信がないまま、消去法の買いには違和感」とのコメント。
「消去法」は良く使われる言葉で特に意味はないし、そんな買いは実はほとんどない。
あったとしても金融機関のサラリーマンしか行わない投資だ。
「持たないリスクを感じる」とか「消去法の買い」は個人投資家さんにはほぼ無縁だろう。
しかし・・・。
「景気回復の確信」が持てたら、既に株価が上がってしまっていることも事実。
確信してから投資するのでは遅いということも現実だろう。
プロのコメントというのは時折素人以下の域があるから面白い。
所詮オウンマネーでの運用でないからなのだろう。
(兜町カタリスト 櫻井英明)