《マーケットストラテジーメモ》 5月第3週
【推移】
17日(月):
週末のNY株式市場で主要3指数はそろって大幅続伸。NYダウとS&P500は1%超、NASDAQは2%超の上昇。520億ドル規模の半導体生産支援法案が発表間近と報じられた半導体セクターが上昇。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は3%高。4月の小売売上高(季節調整済み)は前月比横ばい。市場予想の1%増を下回った。前年同月比では51.2%増。「需要サイドによる物価上昇は一過性のものというFRBの見解が証明された」との見方だ。次は19日発表のFOMC議事要旨だという。
日経平均株価は259円安の27824円と反落。台湾やシンガポールなどで新型コロナウイルスの感染が再拡大。国内でも新型コロナの変異株の感染が拡大。「ワクチン接種や経済活動の正常化の遅れが意識され売りが優勢」との見方だ。前週末の米長期金利の上昇一服や米株高を受け朝方は買いが先行し勢いは続かなかった。東証1部の売買代金は2兆4591億円。ヤマ発が上昇。フジクラ、コムシスが下落。SQ値は上回り2勝。
18日(火):
週明けのNY株式市場で主要3指数はそろって3日ぶりに反落。情報技術や公益事業、通信サービスセクターが下落。「下落要因になっているのはインフレと金利を巡る懸念だ」という見方だ。マラソン・デジタルやライオット・ブロックチェーン、コインベースなど暗号資産(仮想通貨)関連銘柄は3─7%下落。
日経平均株価は582円高の28406円と大幅反発。上昇幅は一時650円まで拡大した。1→3月期のGDP速報値は3四半期ぶりのマイナス成長で市場予想も下回った。「急落後の押し目買い」との解釈だ、東証1部の売買代金は2兆7535億円。ファナック、SBGが上昇。日清粉、コムシスが下落。「トヨタの新高値が市場の雰囲気を好転させた。
寄り付き直後に3月19日の年初来高値を上抜いた。2015年3月以来6年ぶりの高値水準」という声がある。先週3日で2070円安。木曜日からの戻り幅は958円。「率にすると46.2%だから、半値戻しにもう少し」という声もある。
19日(水):
火曜のNY株式市場で主要3指数は続落。ウォルマートとホームセンター大手のホーム・デポが好決算を発表。ただホーム・デポは1.02下落。バークシャーが1?3月期に保有株数を大幅に減らしたことからシェブロンが下落。AT&Tは続落して5.8%安。TモバイルUSとベライゾン・コミュニケーションもそれぞれ3.71%安と1.31%安。フェイスブックが2%近く下落。アマゾンやアルファベットが軟調。「ハイテク株の戻りの鈍さが市場心理の悪化につながった」という見方だ。
4月の住宅着工件数は年率換算で前月比9.5%減の156万9000戸。市場予想を上回る落ち込みとなった。
日経平均株価は362円安の28044円と反落。下落幅は一時500円を超えた場面があった。ビットコインの下落を嫌気して下落幅を拡大した場面もあった。東証一部の売買代金は2兆5099億円,三菱UFJ、スズキが上昇。ファーストリテ、SBGが下落。
20日(木):
水曜のNY株式市場で主要3指数は3日続落。FOMC議事要旨では「経済はFRBが掲げる目標の達成には程遠い」との見解。ただ「進展が継続すれば資産買い入れペースの調整を巡る討議を開始することが適切になる可能性」。この文言も入っていた。主要価3は大幅安で寄り付いた後下落幅を縮小。
暗号資産(仮想通貨)の下落も投資心理をネガティブにしたとの指摘もある。中国の金融業界団体が金融機関による暗号資産関連サービスの提供を禁止するなど規制を強化。これを受けてビットコインは一時30%、イーサは45%、それぞれ急落。暗号資産市場からは一時、時価総額1兆ドル相当が吹き飛んだ。
日経平均株価は53円高の28098円と小幅反発。値頃感からの買い物優勢との解釈。東証一部の売買代金は2兆1734億円。ヤマ発、アドバンテストかま上昇。鉄、海上が下落。
21日(金):
木曜のNY株式市場で主要3指数は4日ぶりに反発。ハイテクセクターが上昇を主導した。好材料視されたのは週間新規失業保険申請件数(季節調整済み)。44万4000件と前週の47万8000件から改善。昨年3月中旬以来の低水準を更新した。
また暗号資産の上昇も投資家心理を上向かせた。フィラデルフィア連銀業況指数は31.5。前月の約50年ぶりの高水準となる50.2から低下。市場予想の43.0も下回った。週間新規失業保険申請件数(季節調整済み)は44万4000件。前週の47万8000件から改善し昨年3月中旬以来の低水準を更新した。
日経平均株価は219円高の28317円と続伸。NY株式市場でハイテク株が買われた流れを引き継いだ恰好。もっとも新型コロナウイルスワクチンを巡る報道が投資家心理に微妙に影響し上値は重かった。東証1部の売買代金は2兆3802億円。リクルート、サイバーが上昇。INPEX東京海上が下落。週足は陽線。
(2) 欧米動向
ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は82.8。
約1年ぶりの高水準だった4月確報値の88.3から5.5ポイント低下した。
期待インフレ率は1年先が4.6%、5年先が3.1%。
ともに10年超ぶりの高水準となった。
4月はそれぞれ3.4%、2.7%だった。
ニューヨーク連銀製造業業況指数は24.3と前月の26.3から低下。
ただ、支払価格指数は83.5に上昇。
2001年の統計開始以来の高水準となった。
(3)新興国動向
週末の暗号資産(仮想通貨)のビットコインは大幅下落した。
中国の金融安定発展委員会が金融リスク防止・管理に向け、ビットコインのマイニングや取引を取り締まる方針を表明したことが嫌気された。
金融安定発展委は、規制を強化する必要がある資産としてビットコインを挙げた。
中国政府がビットコインのマイニングを明確に規制の対象としたのは今回が初めて。
「今回の発表はビットコインのマイニングが中国政府の意向に大きく左右されるリスクを明示している」との見方だ。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・。
【5月】5勝5敗、(勝率50%、9位)
気学では「市場活気づく。後半に波乱あり。利食いを考慮のこと」
24日(月):企業向けサービス価格指数、東京・大阪に大規模ワクチン接種センター設置方針
25日(火):米FHFA住宅価格、新築住宅販売、S&PCS住宅価格指数、CB消費者信頼感、独IFO景況感、変化日
26日(水):企業向けサービス価格指数、株高の日
27日(木):米GDP改定値、耐久財受注、中古住宅販売仮契約、MSCI半期入れ替え実施、変化日
28日(金):失業率、米個人所得・支出
31日(月):鉱工業生産、消費動向調査、商業動態統計、米メモリアルデー中国製造業非製造業PMI、株高の日L、変化日、鬼宿日・大明日・神吉日、ビルダーバーグ会議(?)、水星逆行
国内製造業の純利益は35%増の12兆円と3年ぶりに増益。
「自動車・電機けん引は想定通りの展開だ。
コロナ禍前の19年3月比75%まで回復してきた。
(20年3月期は4割減)
3月時点の見通しよりも上振れだ比率は82%となった。
今2022年3月期は25%増の見通し。
2年連続で2ケタ増益は2014年3月期以来のこと。
一方で非製造業は27%減益。
興味深いのは4.9兆円と巨額の利益を上げたSBGを除外している点。
14日時点で上場企業全体は26%増益。
SBGを除けば1%減益。
「儲かってはいるが信用はできない」というのがコンセンサスなのだろう。
1→3月の実質GDP速報値。
物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.3%減。
年率換算で5.1%減。
マイナス成長は3四半期ぶり。
20年度も前年度比4.6%減。
落ち込み幅はリーマン・ショックがあった08年度(3.6%減)を超え戦後最大となった。
20年4→6月期に大きく落ち込んだ日本経済は7→9月期、10→122月期とプラス成長。
「再びマイナス成長に転じ足踏み」との解釈。
実額(年率換算)で21年1→3月期は534兆円。
コロナ前のピークだった19年7→9月期(558兆円)に比べ4%少ない。
それでも株は大幅に反発。
データだけで株は語れないことの傍証でもあろうか。
(兜町カタリスト 櫻井英明)