《マーケットストラテジーメモ》9月2週
【推移】
9日(月):
週末のNY株式市場はダウとS&P500が3日続伸。NASDAQは3日ぶりの反落。雇用統計は非農業部門の雇用者数の伸びが13万人と市場予想の15万8000人を下回って着地。小売業が7カ月連続で落ち込み、雇用全体の足を引っ張った。時間当たり平均賃金は28.11ドルと前月の28.00ドルから0.4%増加。
伸びは前月の0.3%から加速し2月以来の大きさとなった。失業率は3.7%と3カ月連続で前月から横ばい。強弱入り混じる内容となり市場では9月の米利下げ観測が高まった。週足ではNYダウが1.5%、NASDAQとS&Pは1.8%上昇。
日経平均株価は118円高の21318円と5日続伸。4月17日以来の5日続伸。終値ベースは8月1日以来の高値水準を回復した。東エレ、ファナックが上昇。ホンダ、日産が下落。
10日(火):
週明けのNYダウは38ドル高の26835ドルと4日続伸。7月31日以来ほぼ1カ月ぶりの水準を回復した。10月の米中閣僚級貿易協議が進展するとの期待からキャタピラやインテルなど中国関連銘柄を中心に買い優勢の展開。長期金利が上昇。JPモルガンやゴールドマンなど金融株が大幅高。ただ上値は限定的だった。
主要500社ベースの予想PER約17倍。過去1年近くのレンジの上限に近づいている。高値警戒感から上昇基調が続いていたマイクロソフトなどが利益確定売りに押された。ボーイングも足を引っ張った格好。NASDAQは続落。S&P500は小幅反落。NYダウ、NASDAQ、S&500いずれも最高値まで約2%の水準に迫った。
ただ「上昇をけん引する銘柄、業種に欠けた」との解釈だ。恐怖と欲望指数は39→35→44と上昇傾向。
日経平均株価は73円高の21392円と6日続伸。昨年12月3日の7日続伸以来の記録だ。銀行や保険セクターの上昇は借り株の返済に絡んだものとの見方もある。東証一部の売買代金は2兆2702億円。トヨタ、パナソニックが上昇。任天堂、ニトリが下落。
11日(水):
火曜のNYダウは小幅に上昇し5日続伸。エネルギーセクターは堅調だったがハイテクセクターが軟調でNASDAQは3日続落。東京市場同様にグロースからバリューへの動き。「割安感のある銘柄へのシフトが続いている」との見方だ。
また「低調な中国PPI指標は関税に敏感なテクノロジー株の重し」という声も聞こえる。「アップルTVプラス」を11月1日から月額4.99ドルで開始すると発表したアップルは1.2%高。ファストフードチェーン大手のウェンディーズは10.2%安。通期の調整後利益見通しを下方修正した。
日経平均株価は205円高の21597円と7日続伸。この7日間での上昇幅は約1000円に迫った。買い戻し中心の展開ながら東証一部の売買代金は2兆7371億円。ファナック、テルモが上昇。オリンパス、ダイキンが下落。市場では「グロース(成長)株からバリュー(割安)株への転換」という声も聞こえる。
12日(木):
水曜のNYダウは6日続伸。史上最高値にあと260ドルに迫った。NASDAQも4日ぶりの反発。S&P500は3000ポイント台復活。中国が対米報復関税の対象から一部の製品を免除すると発表したことを好感。アップルが3.2%上昇。S&P500とNASDAQの上昇をけん引した。時価総額は1兆ドルを回復。
ECBが量的緩和策の導入を遅らせるという報道を背景にユーロ債は売り優勢。米国債利回りも上昇した。10年国債利回りは1.7%水準。ドル円は107.80円近辺での推移。
日経平均株価は161円85銭高の21759円61銭と8日続伸と今年最長。上昇幅は一時200円を越えた場面もあった。米中貿易摩擦を巡る緩和期待が支えとなった格好。「海外投資家が日本を代表する主力株に買いを入れる流れが続いている」との見方だ。
今夜ECB理事会を控えて割には強い動きとなった。ドル円の108円台は追い風。戻りの節目として意識されていた7月25日のザラ場戻り高値21823円07銭を更新しムードが良くなってきた。
明日のメジャーSQ算出を控えて高値更新後は上値が重い展開。東証1部の売買代金は2兆7701億円。値上がり1247銘柄。値下がり810銘柄。ZOZO、リクルートが上昇。楽天、ファーストリテが下落。
13日(金):
NYダウは昨年5月以来の7日続伸。S&P500も過去最高値に迫った。中国製品への関税引き上げ延期の方向など米中通商問題の進展を好感したとの解釈。ECBは利下げや量的緩和(QE)の再開など包括的な追加金融緩和策の導入を決定。ユーロ圏成長の下支えや物価の押し上げに向けあらゆる措置を講じる決意を示した。預金金利を現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げ。11月から月額200億ユーロの債券買い入れを行う。10年国債利回りは一時1.8%台に上昇。2年国債は1.725%。ドル円は108円台前半。恐怖と欲望指数は65ポイントに上昇。
日経平均株価は228円高の21988円と9日続伸。終値ベースでは4月26日以来4カ月半ぶりの高値。令和入り後の最高値となった。ザラバは一時22019円まで上昇し5月7日以来の2万2000円台を回復した場面もあった。
連続上昇日数は2017年10月2日→24日の16連騰以来、約22年ぶりの記録。
米中貿易協議の進展期待が高まっているうえ、米国で中間層への減税政策など新たな景気刺激策の観測が浮上。
SQ値21981円09銭を終値で上回っておりSQ値は幻でなく強いサインとなった。TOPIXは7日続伸。東証1部の売買代金は3兆3348億円。地所、ファーストリテが上昇。野村、ヤマトが下落。
(2) 欧米動向
ショルツ独財務相は「ドイツが経済危機に見舞われた場合でも、経済に数十億ユーロを注入することによって対処可能」とコメント。
独経済がリセッション(景気後退)に陥った場合に大規模な刺激策を講じる用意があることを示唆。
ドイツ30年債利回りは一時、約1カ月ぶりにプラス圏に浮上した。
国債利回りはドイツ国債に追随して上昇し4週間ぶり高水準を付けた。
米10年国債利回りは一時1.74%まで上昇。
2年国債利回りは1.68%水準。
ドル円は107円台半ばで推移。
火曜にトランプ大統領は強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を解任。
トランプ大統領の姿勢に変化が出るかどうかがポイントとなる。
トランプ大統領は水曜に「FRBは政策金利をゼロ%、もしくはこれを下回る水準に引き下げる必要がある」とツイート。利下げ圧力を掛けた格好だ。
もっとも「日銀とECBが行った実験で、マイナス金利政策には瑕疵があることが確認された。米国はいかなる代償を払ってもこれを回避する必要がある」という良識的声も聞こえ始めた。
(3)アジア・新興国動向
世界の株式相場は主要25の株価指数のうち22指数が上昇。
上位1位トルコ週間騰落率4.13%、2位日本3.72%、3位ポーランド3.69%、
4位南アフリカ2.96%、5位香港2.48%。
下位25位▲タイ0.49%、 24位スイス▲0.26% 、23位マレーシア▲0.20%、
22位メキシコ0.31%、10位米国1.58%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
13日(金):メジャーSQ、米小売売上高、輸出入物価、ミシガン大学消費者信頼感、企業在庫、中秋節で中国休場
16日(月):敬老の日で休場、NY連銀製造業景況感、IAEA年次総会、中国工業生産、小売売上高
17日(火):米FOMC、鉱工業生産、NAHB住宅指数、独ZEW景況感、イスラエル総選挙
18日(水):日銀金融政策決定会合、貿易統計、訪日外客数、米パウエルFRB議長会見、住宅着工件数
19日(木) :黒田日銀総裁会見、全産業活動指数、米経常収支、CB景気先行指数、中古住宅販売、フィラデルフィア連銀製造業景況感、英国金融政策
20日(金):消費者物価、任天堂新型ゲーム機「スイッチライト」販売、米メジャーSQ
日経朝刊では「沸き立つ社債市場」との特集。
社債に「零下」の足音が近づいているにも関わらず発行体も投資家も債券に傾斜しているという。
9月までの社債発行額は10兆円超。
1998年の14兆円が視野にはいってきた。
プラスの利回りが残る社債に投資家は群がるという構図。
しかし日本学生支援機構の2年債はマイナス0.0005%と零下の状態。
まともな神経では買えないマイナス債券に群がる投資家像はそれこそバブルの絶頂。
ようやくこの巻き戻しが起こるかと考えると、場の雰囲気は悪くない。
「その上を買ってくれる愚かな投資家」探しはいずれ株式市場への恩恵となる可能性は高いと見る。
(兜町カタリスト 櫻井英明)