《マーケットストラテジーメモ》8月1週
【推移】
29日(月):
週末のNY株式は反発。S&P500とNASDAQは終値ベースの史上最高値を更新。好業績銘柄中心に買い物優勢の展開となった。
第2四半期の売上高と利益が予想を上回ったアルファベット(グーグルの持ち株会社)は9.6%上昇。第2四半期決算で売上高が市場予想を上回ったツイッターが8.9%高。第3四半期決算で全体の既存店売上高が3年ぶりの高い伸びとなったスタバは8.9%上昇。マクドナルドは一時過去最高値を更新した場面もあった。
第2四半期の実質GDPの速報値(季節調整済み)は年率換算で前期比2.1%増。市場予測の1.8%増ほど減速せずに着地した。
日経平均株価は41円安の21616円と続落。日足は陰線2本。米FOMCを控えて様子見ムードの強い展開。25日線(21520円)がサポートした格好だ。SBG、任天堂が上昇。キーエンス、ファーストリテが下落。
30日(火):
週明けのNY株式はマチマチの動き。29日のNYダウは小幅高。NASDAQとS&P500は反落。目立ったのは製薬・日用品のJ&Jや日用品のP&Gなどディフェンシブ銘柄の上昇。半導体のインテル指数の上昇に貢献した。30日に決算発表を控えるアップルはUBSが目標株価を引き上げたことが好感され上昇。
ただFOMCの動向や再開予定の米中閣僚級貿易協議の行方を見極めたいとの見方から積極的売買は手控えられた。FANG銘柄中心にハイテクやコミュニケーション関連銘柄が軟調。
日経平均株価は92円高の21709円と3日ぶりの反発。ドル円の108円台後半を好感。下方修正したファナックの上昇などから買い戻しの動きとなった。もっとも後場は上昇幅を縮小。日銀金融政策決定会合での現状維持が物足りなかったという見方だ。
東証一部の売買代金は2兆850億円。8日ぶりに今月3度目の2兆円台となった。ファナック、東エレが上昇。オリ、SBGが下落。
31日(水):
NY株式は下落。背景はトランプ大統領のツイートとの解釈。「2020年11月の米大統領選でトランプ氏が再選すれば、通商協議の行方はさらに厳しいものとなり決裂する恐れもある」。中国が通商協議を巡りトランプ大統領の任期が終わる来年まで時間稼ぎをしないようにとの警告だ。
これを受けてハイテクセクター中心に売り物優勢の展開。もっともNYダウは一時150ドル近く下落していたが引けにかけて下落幅を120ドル近く縮小した。またFOMC待ちという側面もある。0.25%の利下げでの着地にはなるのだろうが一応通過を待っている格好だ。
日経平均株価は187円安の21521円と反落。後場は下落幅を縮小。東証一部の売買代金は2兆66560億円。
大引けに約5000億円増えたのは日経平均採用銘柄の入れ替えに伴う商い。ソニー、第一三共が上昇。千代建、任天堂が下落。結果的には「7月往来」の格好での着地。「5月押し目買い→6月反騰→7月往来」のリズムから「8月上放れ→9月続伸」に期待を持ちたいところだ。
1日(木):
NY株式市場は急落。NYダウとS&P500は5月31日以来の大幅な下落率となった。FRBこの日10年半ぶりの利下げを決定した。下げ幅は0.25%でFF金利の誘導目標は2.00─2.25%と市場の予想通り。FOMC終了後のパウエル議長は会見で「今回の利下げが長期の利下げ局面の開始ではない」とコメント。
これを受けての株価急落となった。トランプ大統領は「FRBが利下げサイクルの開始は示唆しなかったことについて期待を裏切られた」とコメントしている。ないものねだりと過大な欲望があやなした格好での「利下げ株安」。史上最高値圏での一時的調整という見方の方が良さそうだ。「ヒンデンブルグ・オーメン点灯」なんて雑音には惑わされたくないところ。
日経平均株価は19円高の21540円と反発。パウエルFRB議長がFOMC後の会見で利下げサイクル入りを示唆しなかったことで、米国株が急落。朝方は売りが先行し一時下げ幅を200円超に拡大した。
その後ドル高/円安の進行が支えとなっての切り返し。「リスク・パリティ系ファンドのアセット配分の見直しで、株の方にも資金が入ってきているのではないか」という声も聞こえる。野村、TDKが上昇。資生堂、ヤマトが下落。
2日(金):
NYダウは280ドル安と大幅続落。トランプ米大統領は3000億ドル相当の中国製品に対し10%の追加関税を課すと発表。「通商協議は継続している。
米政府は9月1日から、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に対し、小幅な10%の追加関税を課す。今回の措置にはすでに25%の関税が課されている2500億ドルの製品は含まれない」とツイート。
これを受けて利下げ観測が再度拡大した。前日のパウエルFRB議長のコメントに対する意趣返しでの対中追加関税。米中高官協議があったとはいえ、だからこのタイミングと考えるとスッキリする。「下げなきゃ株は上がれない」という法則をトランプ大統領は知っているのかも知れない。
日経平均株価は453円安の21087円と急落。下落幅は3月25日の650円以来の大きさ。令和で最大となった。下落幅は一時580円を超えた場面もあった。米国の対中追加関税の動きから世界経済への警戒感が高まったとの解釈。106円台への円高トレンドも重荷。トヨタの下方修正も嫌気された。東証一部の売買代金は2兆8250億円。カシオ、NECが上昇。トヨタ、ファナックが下落。
(2) 欧米動向
「マイナス利回り債券倍増」というのが水曜日経朝刊トップ。
マイナス利回りの残高13兆ドルは世界の債券残高の4分の1。
債券バブルは「自分の買値よりも上値を買ってくれるより愚かな投資家」を増加させた。
因みに信用力の低い企業向けの「レバレッジド・ローン」の残高は1.2兆ドル。
リーマンショック時の08年(0.6兆ドル)の約2倍だ。
債券バブル崩壊が来そうで来ないから株式市場がスッキリしないという側面もある。
「金利のない世界に未来はない」というのは間違いない筈なのだが・・・。
(3)アジア・新興国動向
米中閣僚級協議における主な交渉テーマとしての米中間が今後解決すべき課題
(1)知的財産の保護
(2)技術移転の強要・強制阻止
(3)中国の産業向け補助金の削減
(4)ファーウェイに対する制裁緩和
(5)農産物やエネルギー輸入の拡大
(5)すでに発動済みの追加関税の緩和・撤廃
(6)サイバー攻撃の抑制
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
2日(金):マネタリーベース、米雇用統計、貿易収支、製造業受注
5日(月):米ISM非製造業景況感
6日(火):家計調査、景気動向指数
7日(水):JPX400の定期入れ替え発表、米消費者信用残高
8日(木) :国際収支、都心オフィス空室率、景気ウォッチャー調査、中国貿易収支
9日(金):SQ、4→6月GDP、マネーストック、米生産者物価、中国生産者・消費者物価、シンガポール休場
7月相場の月間パフォーマンスは6月に続いて245円高のプラス。
6月の674円高に比べると値幅は縮小した。
月中値幅は710円で2年ぶりの小ささとなった。
月初に急伸して始まったのでローソク足(月足)は陰線。
東証1部の売買代金は月間では平均2兆8536億円。
4年11か月ぶりの低水準という。
しかし薄商いは問題ではなかろう。
買い物薄だが売り物薄でもあるということだ。
(兜町カタリスト 櫻井英明)