《マーケットストラテジーメモ》12月2週
【推移】
9日(月):
週末のNY株式市場で主要3指数は続伸。11月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月から26万6000人増と予想の18万人を超えて増加。伸びは10カ月ぶりの大きさになった。失業率は3.5%と前月の3.6%から低下。「やや軟調な経済指標も見られる中で、今回の雇用統計は経済状況の力強さを裏付ける内容だ」との解釈からの株高トレンドとなった。
日経平均株価は76円高の23430円と3日続伸。雇用統計の力強さを受けた週末のNY株の上昇を好感し買い物優勢となったが上値は重く寄り天。後場はほぼ膠着。ファーストリテ、SBGの上昇寄与が25円。花王、キッコーマンが上昇。アドバンデスト、テルモが下落。10年国債利回りは一時マイナス0.05%まで上昇。終値はマイナス0.015%だったが、約9ヵ月ぶりの水準。金利のプラス転換をきっかけにした上昇にも期待だ。
10日(火):
週明けのNY株式市場で主要3指数は4日ぶりに反落。対中制裁関税「第4弾」の全面発動期日は15日。市場では「見送り観測」が支配的だがスケジュールが近づいたことでの買い手控えモード。もっとも先週の大幅高の反動での反落とみる向きもある。11日のFOMCの結果発表を見極めたいという指摘もある。「見極めて」は常套句で「見極めて」からどうするのかは不明だ。
日経平均株価は20円安の23410円。4日ぶりの反落ながら日足は5日ぶりに陽線。売り一巡後は戻したがFOMC、英国総選挙、追加関税発動期限など動けず材料満載。方向感に欠ける展開となった。第一三共、ファミマが上昇。トヨタ、東エレが下落。ジャスダック平均は13連騰。マザース指数は反発。
11日(水):
火曜のNY株式市場で主要3指数は小幅続落。15日に発動予定の米国の対中追加関税への警戒から上下にブレても終値は小幅続落。もっとも対中関税発動は延期する方向で調整との報道もある。11日のFOMCは金利据え置き予想。
ただ消費者物価指数(CPI)ECB理事会なども材料視されてきた。通過すれば関心を示さない材料でも事前には何かとスケジュール視されるのは市場の癖なのだろう。
日経平均株価は18円安の23391円と続落。ただ下落幅は限定的だった。東エレ、ファーストリテが上昇。ファナック、ダイキンが下落。メジャーSQ控えで「期近売り・期先買い」の買いロールが優勢。「期近の日経先物に売り圧力が掛かり易い。相対的に日経平均株価が弱含む展開」との見方だ。
資金は新興市場に向かいジャスダック平均は14連騰。9月5日→26日にかけての14連騰の記録に並んだ。マザース指数は続落ながら売買代金は4カ月ぶりの1000億円超。
12日(木):
NY株式市場で主要3指数は3日ぶりに小幅反発。FOMCはFF金利の誘導目標を1.50─1.75%に据え置くことを全会一致で決定。「来年の米大統領選まで緩やかな経済成長が続き、失業も低水準にとどまる」との見方を示した。
パウエルFRB議長は記者会見で「利上げの必要性は1990年代半ばの利下げサイクル時より低い」とコメント。「ドットプロット」では、2020年の利上げがないことが示された。「株式などリスク資産にとって非常にポジティブ」と解釈とされた。
11月の消費者物価指数(CPI、季節調整済み)は前月比0.3%上昇。恐怖と欲望指数は65→62に低下。
日経平均株価は32円高の23424円と小幅反発。円高トレンドで一時下げに転じた場面もあったが小動きが継続した。信越。アドバンテストが上昇。コナミ、塩野義が下落。ジャスダック平均は14日ぶりの反落。9月5日→26日にかけての14連騰の記録は抜けなかった。
13日(金):
木曜のNY株式市場は主要3指数が大幅上昇。NYダウの上昇幅は一時300ドルを超える場面があり28000ドル台回復。S&P500は過去最高値を更新した。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が「米政府は15日に発動を予定する対中追加関税の見送りを提案。すでに課している約3600億ドル分の中国製品に対する関税を最大50%引き下げる案も提示した」と報道。一気に買い物優勢となった。
日経平均株価は598円(2.55%)高の24023円と大幅続伸。11月26日の年初来高値2万3608円を更新した。昨年10月3日(24110円)以来1年2カ月ぶりに24000円台を回復。上昇幅は今年最大で昨年12年12月27日(750円高)以来の大きさ。「米中貿易問題や英下院総選挙に関して市場の懸念が後退する報道が相次ぎ、短期筋を中心に投資家が運用リスクをとる動きを強めた」との解釈だ。次の上値の目途は昨年10月2日のバブル後最高値2万4448円08銭。
一方12月メジャーSQ値は23895円88銭で前月と打って変わって「幻」でないかった。東証1部の売買代金は3兆4415億円。値上がり1548銘柄、値下がり535銘柄。ファーストリテ、ダイキンが上昇。富士通、コナミが下落。12月の日銀短観は大企業・製造業の業況判断指数(DI)がゼロ。前回9月調査のプラス5から悪化したが見えないフリ。
(2) 欧米動向
JPモルガンは9日付の2020年の米株式見通しのリポートでS&P500の目標値を3400ポイント。
1株当たり利益を180ドルとした。
一方、VIX指数は平均で14.5以下との見通し。
「現在のファンダメンタルズに基づくVIXのフェアバリューは15以下だ」と指摘。
明るいのは世界の半導体出荷額の伸びに2ー3カ月先行する米国の半導体製造装置輸出額。
10月は1年ぶりに前年同月比でプラスに転じた。
日本からアジアへの輸出にも、底打ちの動きが出ている。
このペースが続けば、20年1→3月期の世界の半導体出荷額は前年同期比でプラスに転じる可能性があるという。
(3)アジア・新興国動向
先週の世界の株式相場は主要25の株価指数のうち24指数が上昇。
上位11位メキシコ週間騰落率5.52%、2位香港4.49%、3位韓国4.25%、
4位ロシア3.66%、6位日本2.86%、8位中国1.91%。
下位25位スイス▲0.33%、24位インドネシア0.17%、23位マレーシア0.17%、
22位ベトナム0.27%、21位米国0.43%。
【展望】
スケジュールを見てみると・・・
16日(月):米NY連銀製造業景況感、対米証券投資、NAHB住宅指数、中国各種経済指標
17日(火):米住宅着工件数、鉱工業生産
18日(水):日銀金融政策決定会合(→19日)、貿易統計、訪日外客数、独IFO景況感
19日(木):黒田日銀総裁会見、イランのロウハニ大統領来日、米経常収支、CB景気先行指数、中古住宅販売、米民主党候補者討論会、英金融政策
20日(金):消費者物価指数、米GDP確定値、個人所得、映画スター・ウォーズ日米同時公開
【12月】(9勝4敗で勝率69.2%、1位)
18日(水)日銀金融政策決定会合
19日(木)ECB理事会
20日(金)米メジャーSQ、変化日
25日(水)年内受け渡し最終日、NY市場休場、変化日
26日(木)新月、金環日食、上げの特異日
30日(月)大納会
金曜の日経平均の寄り付き386円高、終値598円高。
上昇幅は一時600円を超え今年最大の上昇幅となり年初来高値を更新。
日足は3日ぶりに大幅陽線。
23468円と23775円で大きく窓を開けた。
月足陽線基準23529円はクリア。
11月の幻のSQ値23637円もクリアし12月メジャーSQ値23895円にも1勝。
日経平均は週間では約668円上昇。週足は陽線。
「年末株高への期待も高まりやすく、下げづらく上げやすい地合い」という声もある。
鰻の匂いだけを嗅いでいた米中貿易摩擦は半歩前進。
ブレグジットは英国保守党の選挙勝利で一歩前進。
日銀短観の悪化は見えないフリという都合の良い相場だ。
OECDの10月の景気先行指数は前月比0.015ポイント上昇の99.290。
2017年10月以来2年ぶりに前月から改善した。
世界経済を半年ほど先取りするといわれる指数の改善。
「景気の停滞観測から脱する兆し」という声も聞こえる。
(兜町カタリスト 櫻井英明)