(10月17日から10月21日の週)
週末、SQ、株高の特異日の東京株式は反発。
SQ値は16741円を上回り「幻のSQ」は脱却。
「16938円(7月21日)、16943円(8月12日)、17156円(9月5日)、
10月11日17074円と17000円近辺に山が4つ並んだ。
上値の重さが意識される」という指摘もある。
ただ下値を切り上げており「エネルギー蓄積中」と見ることもできよう。
10月第1週の海外投資家は2805億円の買い越し。
6週ぶりの買い越しで買い越し額は約3か月ぶりの規模。
個人は2285億円の売り越しとなっておりいつものように外国人と個人の売買は逆相関。
SQまで高かったのが9月。
10月はSQ後に高いという今年本来の動きに戻るように思える。
10月10日株高の特異日。
10月14日株高の特異日。
いずれも今年は上昇した。
となると・・・。
次は10月20日(木)株高の特異日。
次は10月28日(金)株高の特異日。
7月上昇→12月上昇→期待。
10月上昇→翌年2月上昇のアノマリーもある。
ドイツ銀行への課徴金問題に対する懸念が浮沈している昨今。
銀行間市場における調達コストが、欧州主要21行の中で最も高くなっていることも指摘される。
「不良債権に苦しむイタリアやギリシャなどの銀行を上回る調達コストの水準。
ドイツ銀が抱える問題の深刻さを浮き彫りにしている」という。
問題は住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売に絡んで米司法省が求めている多額の制裁金支払い。
ECBが中銀預金金利をマイナスに引き下げ、ほぼすべての銀行の短期市場の調達コストはゼロ。
ドイツ銀は例外的な存在で資金調達に際して9カ月ではプラス0.02%。
1年ではプラス0.06%の金利を支払う必要があるという。
BNPパリバやバークレイズ、クレディ・アグリコルなどはいずれもマイナス金利。
市場はドイツ銀行のゆくえを懸念していることになる。
しかし・・・。
MBSの不正販売が本質なのかどうかはわからない。
デリバティブ商品の粗製乱造が目立ったからの警鐘という見方もできる。
外国の金融当局が課徴金を求めたとして、海外の金融機関がまじめに払うものだろうか。
外国の金融機関の経営を危機に陥れるほどの課徴金を金融当局は真剣に要求するものだろうか。
そもそも金融監督当局というのは金融機関の経営の安全性を監視するもの。
ドイツ銀の経営が真面目でないかも知れない。
米金融当局にとって目に上のたんこぶやハエのように邪魔なのかも知れない。
しかし・・。
敢えてつぶすほどの課徴金というのは理解できるものではない。
原理原則として考えるとドイツ銀行問題はおそらくソフトランディングで落ち着くような気がする。
サウジアラビアは初の国債発行。
1兆円以上の国債を海外発行するためロードショー開催するという。
オイルマネーの大きな変化はここにあるのだろう。
「油断」以来、営々と富の源泉を築いてきたのが原油価格の下落によって崩れたことになる。
昨年夏以降の株価下落の遠因も、結局オイルマネーの日本株売りだったことの傍証でもあろう。
マネーのパワーバランスの大きな変化と捉えるべき局面に思える。
中国ではネット金融が膨張。
不動産関連の融資仲介が7000社以上あるというのはやや異常感だ。
ネット上での個人の資金貸借仲介は「P2P」と呼ばれるサービス。
不動産神話がまだある中国ならではの構造だろう。
日経平均想定レンジ
下限16727円(25日線)~上限17613円(4月25日高値)
マーケットで重要なことの一つはたぶん「フツーの常識」で考えること。
HFTとかデリバティブが全盛のような論調に驚いて何か特別な見方をしなければならないという切迫感。
これはたぶん間違っている。
一部を切り取って微分した結果は陽炎みたいなもの。
四半期決算だってグローバルスタンダードというものの使い勝手が悪く思う企業もある。
アナリストやファンドマネージャーにげ迎合して横文字を乱発する人もいる。
お互いに意味不明のままの会話というのも時折目にしないではない。
「先物だ、オプションだ、アルファ値だ、ベータ値だ」と騒いでみても言葉の定義は意味不明。
ブラックショールズを計算できる人がどれだけいるのだろう。
アルゴだといってみても単にスピード感と煩雑さからの解放。
ほとんど相場の役には立たない筈。
でも知らないと恥ずかしいから知ろうとする。
時間の無駄になっていることは間違いない。
大きな見出しや大きな声に惑わされないこと。
デフォルメされたニュース選択を信じないこと。
大切でないことが「極めて重要」と大げさに表現され、大切なことが短文や小さな声で囁かれる。
たぶんこれが現実。
そう考えると重要なのは現実を直視すること。
株価の推移を見つめること。
そこでたつかんだリズムとハーモニーの中に真実があるのだろう。
「株価は森羅万象を織り込んでいるから神聖で正しい」という説がある。
これは誤謬だろう。
もしも株価が正しいのなら売り買いが一方通行になる筈。
そうでないから日々株価は移ろう。
つまり株価は歪みの合成体なのである。
誰かが間違っているからこそ株価は形成される。
そのゆがみやひずみに気がつくことが求められる世界に他ならない。
そして・・・。
無理に平成のデジタル思考につき合わなくても、昭和のアナログ思考で十分通じるマーケット。
背伸びして現実から遠ざかる必要はないような気がする。
他人の常識や他人の視点でなく自分の経験値と常識にこそ価値がある筈。
ソフトバンクという会社がまたその本性を露わにした。
今回はサウジアラビアの政府系ファンドと組んで最大10兆円規模のファンドの設立。
投資対象はIoT事業というからつじつまは合っている。
3兆円でアームを買収し、今後は資金手当て。
つまりソフトバンクというのは投資ファンドの変形バージョン。
ソフトバンクの歴史を見ればずーっとこの繰り返し。
マネーと利益の創造力はたくましいし、同社の胡散臭さと魅力もここにあるのだろう。
孫氏が開発したであろう1978年の自動翻訳機。
これをシャープに売り込んで1億円の資金を創った。
その後インベーダーゲーム機をアメリカに輸入。
日本ソフトバンクの設立は1983年。
始めたことはパソコン関係の雑誌の販売。
フォーバルと共同で世界初のLCRを開発したのは1987年。
ここで得た資金で急成長。
しかしマイクロソフトと設立したゲームバンクは撤退。
米国の出版社であるZiff Davisに資本参加したが、収益が上がらず2000年に売却。
1996年に 米ヤフーに多額の出資をし、合弁でヤフージャパンを設立。
メモリメーカーのキングストンテクノロジー社の買収失敗に終わり撤退。
ルパート・マードックと共同でジェイ・スカイ・ビーを設立。
しかし旺文社から買ったテレ朝株は買い戻された。
99年に東電と設立したスピードネットは清算。
2000年日債銀に出資。
2003年あおぞら銀行株を米国の投資ファンドに売却。
この売却益はソフトバンクBBに投入されたと観測される。
2006年ボーダフォンを1.75兆円で取得。
東証の所属業種が卸売業から情報・通信業に変更された。
こう見てくると、何かを作り出している訳ではないように見える。
長けているのは将来儲かりそうな企業への出資による失敗と成功。
自分の褌で事業をする訳でなく他人の褌をマネーという力で大きくする事業に映る。
取得-売却-取得の反復からようやく脱出し実業の世界に入ってきたのが携帯電話事業。
しかし、今回はここにとどまらず格好のビジネスモデルが登場した。
それがIoT。
日本政府のみならず世界が目標に掲げており嗅覚は間違いなかろう。
そして資金力としては世界最強に近いオイルマネーをバックにした。
オウンマネーが最大2.5兆円。
サウジ側が最大4.5兆円。
何でもかんでも合計最大10兆円という規模は大きい。
「今後10年でテクノロジー分野において最大級のプレーヤーとなる。
出資先のテクノロジー企業の発展に寄与することで、情報革命をさらに加速させる」。
同社の資料によると、これまでに7398億円をインターネット企業に投資。
10兆1000億円の利益を得たという。
保有する上場株式の含み益は9兆3000億円。
マネーによるマネーの創造と言う点では比類なきマラソンを行っているように見える。
1978年頃の孫氏が開発した電子翻訳機を売り込みに使ったロゴの2本線は「海援隊」の旗に基づいているという。
「ソフトバンクは、同志の船。
マストに翻るのは、21世紀の海援隊」という願いだったという。
同時に「=(イコール)」を意味。
情報ネットワークを誰もが公平に楽しめる世の中を実現するための「アンサー」を導きだすのはソフトバンク。
そんな決意と願望は今「=」となっているのだろうか。
「買収と売却の企業像」そして他人の成果の前取りはまだまだ続きそうだ。
「マネーイズマネー」なのであろう。
原油のない国の企業が原油の果実を享受する構図は悪くはない。
この際、100兆円以上も現金を持っている日本企業は投資ファンドでも設立すればどうだろう。
営業得利益率20%もあれば市場は納得するに違いない。
成長できないのなら成長を取りに行けばいいだけのことだろう。
(兜町カタリスト 櫻井英明)